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エーサン小咄
2005年09月15日(木)

洗い桶に最後の皿を置いて、きゅっと蛇口を締める。
濡れた手を拭いて煙草に火を点けて、ゆっくりと肺の奥まで煙を吸い込む。
先程まで大騒ぎだった甲板は、今は随分と静かだ。レディ達はとっくに自室に引き取っている。野郎共は全員潰れたか。
ならば洗い物を引き取って来ようと、ポンとシンクに灰を落としてドアの方を振り返ったところで、サンジはギクリと固まった。
「よ、コックさん」
「…エース」
今日の酒宴の主役が、汚れた食器類を器用に片手に掲げ持って立っていた。
全く気配を感じなかった。いくらベタ凪ぎだからと言って、ドアが開いた事にすら気付かなかったなんて。サンジは思わず小さく舌打ちをすると、乱暴な足取りでエースに歩み寄り、その手から皿を奪い取る。
「ありがとよ」
どうしまして、と気障ったらしい口調で言うと、エースはサンジが銜えていたタバコを人差し指と中指で挟み、すっと抜き取った。
「んな…」
不躾な行為にムッとして男の顔を睨みつける。彼は涼しい顔で、第二関節のあたりでタバコを挟み、手の平で口元を覆う様にして煙を吸い込む。赤くなる火種を見つめながら、煙草の吸い方まで気障な男だと、思わず眉間の皺が深まる。
一応は気を遣ってか、天井に向かって煙を吹き出す男ののど仏の辺りに目をやりながら、この男は女の子にモテるのだろうな、などとムカムカしながら考えていたら、ふいに顔を戻したエースと目が合って、サンジは思わずパチパチと目を瞬かせた。
「みんな潰れちまったぜ」
口の端をきゅっと上げる彼独特の笑みに、苦々しい気分で目線を反らす。
「あ、そう」
できるだけわざとらしく聞こえないように意識して素っ気なく言うと、彼に背を向けて、シンクに食器を置いた。
「手伝おうか」
「あんたは客だぜ、連中と一緒に寝ちまいな」
蛇口を思い切り捻って洗い桶に水を溜める。早くここから出て行ってはくれないか。
けれど、サンジの望みとは裏腹に、男が部屋を出て行く様子は無い。
「俺、あんたと飲みたかったのに。キッチンに籠って全然出て来てくれねーんだもん」
少し拗ねた様な甘い口調にはどこか面白がっている響きがあった。
エースはサンジに対してだけ、こんな口の聞き方をする。偶然二人になった時や、身体を寄せて自分だけに聞こえる様に耳元で、意味ありげに。
この男のこういう所が苦手で、今日はキッチンに籠っていたのだ。
サンジが嫌がっているのを判っていて面白がってやっているのだから始末が悪い。まあそれならこちらは出来るだけ近づかない様にするだけだ。どうせすぐに出て行く相手なのだから。
「俺はコックだからな。料理して給仕するのが仕事なんだよ」
「…ふーん」
背中に視線を感じる。なんて不躾で強い視線なんだろう。項の辺りがチリチリして落ち着かない。少々乱暴に皿を洗い桶に突っ込む。大事な食器をこんな風に扱うなんて、そんな風に動揺している自分にも腹が立つ。気付けば桶から水が溢れていた。落ち着け、平常心、と自分に言い聞かせ、水を止める。
「なあ」
ねっとりと、ひどく甘い声が鼓膜にまとわりつく。距離は離れているはずなのに、まるで耳元で囁かれているようだ。
「俺に背中見せていいの?」
息苦しい。叫び出したい。
「気付いてるんだろ、俺があんたの事どんな目で見てるか」
キッと振り返って睨みつける。しかし次の瞬間、挑発に乗った事を後悔した。
テーブルに浅く腰掛けたエースは、背中を丸めて膝の間にだらりと両手を垂らし、こちらを見ている。
その、目が。
なんて目で人を見るんだろう。
欲も熱も隠そうともしない、いや、むしろこちらに見せつけようとするような。
視線に焼かれる。彼の頭の中で丸裸にされているような感覚に、気付けば握りしめた拳にじっとりと汗をかいていた。
なんとかここから逃げ出したい。プライドもなにもなくそう思って、思わず目線が退路を探って辺りを泳ぐ。
エースがゆっくりと立ち上がる。
男の発するオーラの様なものに押されて、身体がすくんだ。
緩慢な、でも大きな歩調であっという間に距離を詰められて、もつれる足で後ずさろうとして、すぐに腰がシンクに当たって退路を断たれる。
胸がぶつかる程に身体を寄せられて、サンジは喘ぐ様に息を吸い込んだ。
これ以上は無理というくらい大きく目を見開いて彼の目を見返す。見たくないのに、強すぎる視線に縫い止められたように目を反らせない。
両手で痛い程に腰骨を掴まれる。ヒュッと、思わず漏らしてしまった息に、唇を噛み締める。
「細いな…オレの突っ込んで揺さぶったら壊れちまいそうだ」
「なっ…!」
「お前の事、頭の中で何度も何度も犯した。めちゃくちゃに」
ひたと目を覗き込んで低く囁く声に、身体がブルリと震えた。
「泣いて嫌がるお前を裸に剥いて全身舐め回して噛み付いて、ケツに俺の性器突っ込んで、ぐっちゃぐっちゃに揺さぶって、何度もお前の中に出した」
膝がガクガク震える。密着する身体が熱い。熱が伝染する。息がかかる程近くにある彼の顔がジワリとぼやけて、自分の瞳が濡れている事を知る。
まるで子供がするように、大声で喚きながら、両手で耳を覆ってこの場にうずくまってしまえたら。
「次は絶対俺のモンにする」
耳元でそう囁かれた。そこから侵される。全身に痺れが広がる。
しかしエースは唐突に身体を離すと、キスの一つも与えずに、あっさりと背を向けて部屋を出て行った。
パタンとドアが閉じるのと同時に、サンジは喘ぐ様に大きく口を開けて、震える息を吐き出した。
ズルズルと膝が崩れて床に座り込む。
身体の芯が熱い。全身を覆う痺れに指先が細かく震えている。
サンジは間違いなく、欲情していた。
やがて大きな水音がして、窓の外が一瞬パア、と明るくなる。エースの船が遠ざかる音がする。
両手で身体を抱いて、立てた膝に額を擦り付ける。
この身体の熱を持て余し、彼を待ち続ける日々が続く―――そんな有り難くもない予感にぎゅっと自分を抱く腕に力を込める。
あの熱い腕に焦がれて、今日からどれ程眠れない夜を過ごせばいいのか。
「ちくしょう…」
とんでもない置き土産を残して言った男に向かって毒づく声は、甘く掠れていた。



エース式、さよならの挨拶。
ただそれだけの話。
似た様な話を前も書いた様な気がするのは気のせいか?

小咄ばっかですんません。
さてさて、リンクに素敵サイト様2件お迎えです。
どちらもバナーがエーサンです!えへえへ。うれしー。

おかえりなさい…って今更ですが、エロチカのアサヒさんの新しいサイト、「エロチカロケット」さん。新しくなっても頼もしくエーサンで惚れ惚れです(変な日本語だな)。同盟復活も希望いたしております。
それから、ガブがずっとオンでもオフでもお世話になっております(いや勝手に…)モティカさんのサイト、「HOTURE」さん。モティカさんの描かれるサンジちゃんはなんでああもエロっぽいか(褒め言葉ですよ)。
えへへ、末永くよろしくお願い致します。
メールでのご挨拶は明日以降(コラ!)。


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