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ハロウィーンネタ
2004年10月31日(日)

その島には結構な規模の海軍支部があり、その影響力が強いと聞いた。そのためゴーイングメリー号は、できるだけ目立たぬようにと海賊旗を下ろし、港に入ったのだ。

それなのに、見下ろすこの港の雰囲気は一体何事か。
念には念を入れ、夕方薄暗くなってから入港した。碇を下ろし、船の上から周囲を見渡せば、どう考えても港にはそぐわないオレンジ色の電飾が、パカパカと瞬いていた。
中世風のダラダラビラビラした衣装を着た港の係員が、手に羽ペンを持って、商船らしき大きな船から降ろされる積荷のチェックをしている。かと思えば、積荷を降ろす指示をしている作業員は、全身緑色のタイツに指先の膨らんだ手袋をしている。あれはもしかしてカエルのつもりだろうか。あっちで電々虫持って走り回ってる係員は、何故かサムライの格好だし。

「そうだ!今日はハロウィーンだ!」
パチンと指を鳴らしてナミが叫んだ。
「ああ、そうか!あ!ホントだ、あそこにかぼちゃのお化けがある!」
倉庫の脇に積まれた木箱の上に飾られたジャック・オ・ランタンを見つけて、ウソップも歓声を上げる。サンジに抱え上げられて港を見下ろしたチョッパーも顔を輝かせた。
そんな彼らとは対照的に、ルフィとゾロの2人はきょとんとした顔をしている。
「ハロウィンてなんだ?」
「食えんのか?それ」
おいてきぼりを喰らったような顔のルフィに、ロビンが解説を始めた。
「元々は万聖節といって、11月1日に聖人達を偲んで、仮装してパレードをするお祭りよ。万聖節は別名をオールハロウズデイと言って、その前日の10月31日、オールハロウズイブが次第になまってハロウィーンと呼ばれるようになったらしいわ。でもそもそもの起源はもっと昔の異教のお祭りに遡るらしいわね。その他にも色々な民族のお祭りが混ざりあって現在の形になったと言われているわ。」
「さすがロビンちゃん!」
ロビンの詳細な解説に、サンジがメロメロとその博識を褒めたたえる。もっともルフィはその話を聞いても、わかったんだかわかってないんだかな顔をしているが。
「俺の国にはなかったな、そんな風習」とゾロが言う。
「仮装か…俺の島では、男が5月5日に鎧着たぞ」
「いや、あれは本来飾るモンで着るモンじゃねーよ!」
ボケるルフィにゾロが突っ込む。いや、ルフィの場合は天然だが。
そんな二人のために、ナミがロビンの話を彼らにもわかりやすいように補足する。
「現代じゃ仮装するのは主に子供達よ。それで近所の家をまわるの。『トリック・オア・トリート』お菓子をくれ!さもないとイタズラするぞ!って言ってね」
「お菓子もらえんのか!?」
「…あ…」
お菓子と聞いて、キラキラと目を輝かせる船長に、ナミがしまった!という顔をする。トラブルの予感に頭を抱える彼女の神経を逆なでするように、ラブコックが能天気に鼻の下を伸ばす。
「お姫さまの仮装したナミさんとロビンちゃん、かわいかっただろうなー」
「私はハロウィーンのイベントに参加した事はないわ」
「ロビンの故郷にはハロウィーンの習慣は無かったの?」ロビンの言葉にナミが意外そうな顔をする。
「いいえ、そうではないのだけど、私はあまり子供らしい事はした事がないのよ」
ロビンが苦笑して言った。子供の頃から悪の組織にいた彼女には、そんな子供らしい遊びをする余裕などなかったのだ。
気まずげに目をあわせるナミとウソップに、サンジが助け舟を出した。
「俺も、トリック・オア・トリートはやった事ねぇなあ。ガキの頃から働いてたから」
「ああ、そうか」
少々ホッとした顔でナミが言う。サンジはくわえ煙草でロビンにニッと笑った。
「うん、どっちかって言うと、お菓子をあげる方だったな」
ロビンと他のクルー達の間には、乗り越えられない壁のようなものがある。一番最後に船に乗った、という事だけでなく、もちろん年令的なものだけでもなく。他のクルーにあって、ロビンに無いもの。それは過去の優しい想い出や、誰かに愛された記憶だ。
ロビン自身はその事を今更どうこう思っている訳ではない。今の彼等のとの距離感に不満も無い。けれど、この船の金髪の優しいコックはそうではないらしい。
「子供らしい遊びなんて、ほとんどしたこと無かったぜ」
サンジがまるでロビンの気持ちを代弁するかの様に語る。
「早く大人になっちゃったんだよね、俺たち」そう言って、サンジはロビンに悪戯っぽく笑いかける。まるで年下の相手にするような表情だ。
ロビンは、時々こんな風に自分に接してくる、この随分と年下の綺麗な顔をしたコックを不思議な思いで見ていた。決して押し付けがましくはない、彼のさり気ない気遣いは、それでもロビンを戸惑わせる。
寂しいなどと思わなくなって久しい。でも、ほんの子供の時は、親を思って泣いた事もあった。自分と同じ年頃の子供達が楽しそうに遊んでいる姿に、羨望の念を抱いていた。
今の今まで忘れていた。思い出す事にも痛みすら伴わない。
それでもサンジは、まるでロビンの過去を埋め合わせようとするかのように、大切な大切な相手に対するような態度で彼女に接する。
そして、彼の魔法の様な手で作り出される食事やお菓子、飲み物等を用意して、大袈裟な賛辞の言葉と共に、ロビンを仲間の輪に引きずり込むのだ。
彼がどこまで意図的にそうしているのかはわからない。でも、サンジのおかげで皆との距離が随分と近づいた。
「いい子ね、コックさん」
ロビンがにっこりと笑って言う。
「…子、はやめてよ、ロビンちゃん」
そんな二人のやり取りを隣で眺めていたナミが、「おや?」と目を見開く。
普段ならここで、デレデレとヤニ下がるはずのサンジが、きまり悪そうに苦笑している。
ロビンといる時のサンジの雰囲気は、ナミと居る時のそれよりも、少し甘い。甘えるように、甘やかしている。
『ロビンちゃんは時々、ものすごくピュアな女の子みたいだ』
サンジがロビンの事をそう評した事があった。その時の彼の表情がとても優しかったことが、ナミの印象に残っている。
「そっか、サンジ君とロビンってそういうところが似てるんだ」
「は?」
ナミの声に、サンジとロビンが同時に彼女を振り返る。
「なんでもなーい」
二人とも妙に世慣れている感じはするのに、どこか箱入りっぽいような、物凄く純粋なところがある。多岐にわたるロビンの知識は、決して全てが経験に基づくものではない。経験値という点ではロビンは物凄く偏っているだろう。サンジだってそうだ。それこそ物心つくころから船上で生活していた彼の生活圏はおそろしく狭かったはずだ。彼の場合、いわゆる耳年増ってやつだ。きっと好奇心が強い子供だったに違いない。
そろって不思議そうな顔でこちらを見ている二人に、ナミはふふっ、と笑う。「可愛い」などと言ったら、サンジはともかく、ロビンはなんと言うだろうか。

「よし!今日ははろうぃんぱーてぃーだ!」
拳を突き上げて、ルフィが叫ぶ。ウソップとチョッパーが歓声を上げる。そこへすかさずナミがクギを刺した。
「ルフィ!言っとくけど、あんたはトリック・オア・トリートは禁止よ!」
「ええええーーーーーーー!!」
「でもみんなで仮装するってどう?」
ルフィの首根っこを押さえ付けたナミが、クルー達に向ってウィンクをした。
「おお!」
ナミの提案に、お祭り好きのクルーの皆が目を輝かせる。
「変装もかねてね。海軍へのいい目くらましになるわ」
興奮して大盛り上がりのクルーたちを微笑ましげに見つめていたロビンに、ナミがくるりと向き直って人さし指を突き付ける。
「ロビンはシンデレラよ!」
「ええ?私には似合わないわよ」
「ダメダメ!女の子はみんなお姫さまになるもんなの!」
目を丸くするロビンに、ナミはチッチッチ、と指を振ってわざとしかめつらしい顔をする。
この船に乗っているかぎり、そんな風にいつまでもスカした顔なんかさせてあげない。

「よーっし、俺は巨人族のドギーかブロディだ!」
「俺は肉になる!」
「いやそれ仮装じゃなくて着ぐるみだろ!」
「ゾロは鷹の目のオッサンなんてどうだ!」
「なんで俺があいつの仮装しなきゃなんねーんだよ、胸くそワリィ!」
「だってゾロ、あのオッサンの追っかけだから」
「誰がだ!!」
「野郎の仮装なんざなんでもいいんだよ」
ワイワイと盛り上がる男共にぞんざいな視線を投げかけた後、サンジはナミとロビンに向って腰を屈めてうやうやしく一礼する。
「俺は二人のお姫さまをエスコートするプリンス…」
「サンジ君は白雪姫よ。素敵なドレス見立ててあげるからね!」
「ええ!?」
「あら素敵」
「きっと似合うわよー!ドレスの色は何色がいいかしら」
「金髪で色が白いから、まさに正当派のお姫さまね」
何やら楽しそうに盛り上がる女二人に、サンジは「いやあのその!」と両手を振り回す。
「俺は麗しのプリンスとしてレディ達をエスコートしてさしあげないと!」
必死で言いつのるサンジのおでこをピンと弾いて、ナミがニヤリと笑う。
「だーめ!出資者に逆らえると思ってんの?」
「フフフ、きっと似合うわよ、コックさん」
「ロ、ロビンちゃんまでそんな事…」
「よーし!そうと決まったら、とっとと下船して衣装を調達するわよ!」
両手を腰に当てて男らしく叫ぶナミに、皆が「おおー!」と拳を突き上げる。
「ただし、経費節減の為、男共は一山いくらの森の小人に決定!」
「ええーーー!!!!」
「ずりーぞナミ!サンジばっかりひいきして!」
「うるっさいわね!こういう時は女の子に花を持たせるもんよ」
「いやあのナミさん俺はれっきとした男で…」
「さ、行きましょ」
ブーブーと不満の声を上げる男共に背中を向けて、ナミはロビンとサンジの腕に腕を絡める。腕にナミの豊かな腕を押し付けられて、女子組に入れられて困惑していたはずのサンジが相好を崩す。
ロビンはというと、少し困ったような笑いを浮かべて、それでも促すナミに逆らわず、賑やかな港に降り立つべく、歩き出したのだった。




実にとりとめのない、なんてーこともない話なんですが…季節ものな上、今ロビンちゃんが色々微妙なので、今上げなきゃ一生上げないだろなーと思い…。



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