気紛れ銀魂小咄<4>
2004年09月21日(火)
「おい、土方」 「―――なん、だよ」
心臓が跳ねた。
背もたれに両肘をかけ、ソファにだらしなくふんぞり返った格好の銀時が、ジッとこちらを見つめている。 ふざけてばかりのこの男の本心は、いつも全く読めなくて、それがこんな風に表情の消えた顔をしていると、余計に得体の知れない感がある。 ひたと見据えて逸らされない、不躾な視線。 何を考えているかわからない色素の薄い瞳が、夕日を受けて、銀とも金とも付かぬ色で鈍く光った。 この男は、自分などは足元にも及ばない修羅の道を歩いてきたのではないか。 ふとそんな事を思い、ゾクと背筋が震えた。 こいつが珍しく―――いや、始めて自分の名を呼んだ。 この違和感はそのせいだ。 そんな風に思いたくても、目の前の男の圧倒的な存在感に、土方は気圧される。 「なあ、お前―――俺と寝てみる?」 「―――何、寝言言ってんだ」 僅かに声が掠れた。その事に動揺する。 「俺、お前が好きだよ」 「な…」 ニッと嫌な顔で笑ってそんな事を言う銀時の口調は、まるでケーキが好きだ、とでも言うように軽い。土方はカッと腹の底が熱くなるような、訳の分からない怒りを覚える。 認めたくはないが、この男には振り回されっぱなしだ。この男の言動にいちいち反応して、感情を動かされる自分が実に腹立たしい。 不意にぐい、と強く腕を引かれて、倒れこんだ土方を銀時が自分の身体の下に抱き込む。 胸の上に肘を乗せて、顔を覗き込まれる。 「俺の事、あのゴリラだと思っててもいいし」 「―――だからそんなんじゃないって何度も言ってんだろ」 苛立った口調で言う土方の言葉など聞いていないかの様に、銀時は「俺の方が全然男前だけどな」などと飄々と笑う。その表情は、色事を仕掛けてきている雰囲気とはほど遠い。 「いいじゃん、別に好きの形をはっきりと決めなくたって」 ジッと見下ろしてくる意外な程に整った顔を、まるで目を逸らしたら敗けだとでも言うように、土方はきつい目で見返す。 「セックスが出来る好き、出来ない好き―――それがイコール、恋愛感情かそうでないか、だけじゃつまんないでしょ、人生」 「……乱れてんな、万事屋」 逆光になって、銀時の表情が読みづらい。 それでもフッと笑ったような気配がして、ゆっくりと顔が近付いてくる。 息がかかるくらいに唇が近付いて、土方は思わず目を伏せた。
「ところで素朴な疑問なんですがねィ―――」 「……ッッッッ!!!!!」 突然かけられた声に、二人はギクゥ!!と声も無く固まった。 「なっ、なっ、なっ、総悟!?」 「糖ってのは、ザーメンにも降りるもんなんですかねィ」 ソファの正面にしゃがみ込んで二人を覗き込んでいるのは、いつからそこにいたんだか、とにかく言うまでもなく沖田であった。全く邪気の無い顔で小首をかしげる姿はえらく可愛らしいが、言ってることは相当えげつない。
「………………………」 「………………………」
土方は黙って立ち上がると、タバコに火を付けた。 スパーっと煙を吐き出して、コキコキと首を左右に捻ると、銀時に背を向けて歩き出す。 「さて、行くか、総悟」 「えー、ちょっと多串君、せっかくいいムードだったのにー!」 「うるせえ、糖尿」 「えーーーーー!」
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頑張れ銀ちゃん。 えーと、ここ万事屋かな?
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