小咄5
2003年12月12日(金)
こんにちは、食あたりです。 一昨日の夜から昨日の朝まで、上から下から大変でした。ようやく起きあがれるようになったのが夕べ。そして今日は会社をお休みしてしまったです。 実は体調がおかしくなった頃、うさこさんとご一緒してまして…ゴメンね、ホントご迷惑を(汗)。品川くんだりまで呼び出しといて、本当に申し訳なかったです。この埋め合わせは次回必ず!! やー、やはり昼に食べた海鮮丼かなー?同僚は平気だったんだけどなー。 そんなガブんちに、今日クール宅急便で生ガキが届きました。大・好・物!!なんですがっ、今はちょっと不安です(当たり前だ)。しかも宅急便の伝票に「フクツー便」ってシールが張ってあった。…それってどうよ?不吉じゃねーか?
えーと、明日から仕事なので、リハビリのため小咄を。いや、なんのリハビリだよ。 濃いめのエロを二発ほどひねり出し、その後、食あたりのせいでなんか色々汚れたもんも出切って、現在カスカスで、ちょっとキヨラカなガブちんです。
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ゴーイングメリー号のゴム船長は、快晴の空の下、珍しく浮かぬ顔でラウンジのドアの前をうろうろとしていた。
今朝方、夕べのつまみ食いがバレてサンジに思いきり叱られた。 「だってハラ減っちまったんだもんよー」などと悪びれずに笑うゴム船長の首根っこを掴んで、サンジは真剣に怒っていた。
気紛れなグランドラインの気候のせいで、GM号はここ最近立て続けに嵐に見舞われた。おかげで航海の日程が狂っていた。本来ならばもう島影が見えてもいい頃なのに、未だその気配すらない。 前に寄港した島で食料は充分に補給した。もちろんそんな事本人には言いはしないが、万年欠食児童の船長のつまみ食いまで計算に入れての補給量だった。 だがしかし、先の読めない航海の中で、いつ食料が不足するかわからないのだ。実に無邪気な船長のせいで、全員が餓死するはめにでもなったらシャレにならない。
ルフィの大好きな海の色をした瞳が、静かな怒りで温度の低い炎の様に揺れていて、その綺麗さに思わず見愡れた。真摯な瞳だった。 いつもなら、つまみ食いを発見したその場で思いきり蹴り飛ばされるはずが、今日は真剣な瞳で言われたのだ。「この船の船長なら、クルーの皆の命を危機に晒すようなマネをするな」と。 そして、珍しくもルフィは反省したのだ。サンジの瞳はとても怒っていて、だけど、とても哀しそうでもあった。彼にそんな顔をさせた自分に腹が立った。
そんなことがあって、あれからまだサンジに近寄っていない。 サンジの事だ、それでもちゃんとルフィにも朝食を用意してくれていた。だけど、彼の静かな怒りの気配は伝わってきた。サンジの背中はルフィを拒絶していて、とりつくしまもない。それは、いつもみたいに怒鳴られたり蹴られたりするよりも、よっぽどルフィにダメージを与えた。
ルフィは一日に何度もサンジにまとわりつく。ご飯を、おやつをねだって甘えるようにしがみつくと、サンジはいつだってちょっと怒ったような口調でブツブツ言いながらも、必ず彼が望むものを与えてくれる。 それは、食べ物だけじゃなくて、しがみつくといつもほんのりと香る、サンジの甘い匂いだったり、口では文句を言いつつも甘やかすような微笑みだったり、ルフィの頭を小突いて来る、暖かくて白い手だったり。
胃のあたりがモニョモニョする。腹が減る以上に力が出ない。それはサンジに触れていないせいなのだとルフィにはわかっている。 とにかく謝らなければと、意を決してそっとラウンジのドアを開けた。明るい外の日射しに慣れた目には室内は暗すぎて、ルフィは目を細めながら、中の様子を伺う。 幾分暗さに慣れた目をキッチンに向ければ、シンクの前に立つサンジ。その光景を目にして、ルフィは思わず息を飲んだ。
丸窓から外の強い日射しが斜に差し込んで、サンジを柔らかに包んでいる。薄暗い室内で、そこだけが綺麗に淡いパステル画の様に浮き上がっていた。 金色の髪が、自ら淡く発光しているかのようにハレーションを起こしている。色素の薄い彼は、強い光の中に 溶け出して、今にも拡散して消えてしまいそうだった。 きっと天が彼を愛している。この薄暗い部屋でちらほらと舞う埃ですら、サンジを包む光の中では金色に光り輝いて、まるで彼を祝福しているかのようだ。 彼がこのまま誰かに連れ去られてしまいそうで、ルフィはそんな自分の想像に思わず室内に足を踏み入れた。
気配に気付いたのか、ゆっくりとサンジが振り向く。 滑らかな頬と尖った顎が、光の中でその輪郭を曖昧にして、いつもよりも彼を儚げに、どこか幼くも見せる。長い睫毛が目許に影を落として、ルフィの大好きな蒼い瞳を隠している。喜怒哀楽の激しい彼の感情を映して、いつもはとても雄弁なその瞳が見えないだけで、なんて不安を掻き立てられるのだろう。 切ない様なこの息苦しさはなんだ。サンジはルフィにこれまで知らなかった不可解な感情を次々と思い知らせる。
「―――サンジ…」 ゆっくりと歩み寄るルフィに、僅かに首を傾げて口元に微笑みを浮かべる。どうやらもう怒りは解けたようだ。だけど、そんなことすらどうでもよくなるくらいの焦燥感にかられて、ルフィはサンジに向って腕を伸ばす。 「サンジ、サンジ―――サンジ」 サンジの目を凝視したまま、縋るように彼の腕を取る。そんなルフィに少し驚いた様に目を見開いて、サンジは口を開いた。 「なんだ、クソゴム、反省したか?」 彼の白い腕を手繰り寄せて、必死な気持ちできつく抱き締めた。 「どうした?」 「なんか…サンジ消えちまいそうだ」 「…はあ?」 「ゴメン、ゴメンナサイ…だから…どこへも行ったらダメだ!」 「どした?お前、頭でも打ったか?」 不審そうなサンジの声に、なんと答えていいかわからず、ルフィはただサンジの肩に強く額を擦り付ける。 苦笑する気配がして、サンジの白い手がルフィの汗を含んだ前髪を柔らかくかき上げた。 ますます強くしがみついたルフィが、肺一杯にサンジの匂いを吸い込む。サンジは相変わらず甘いようないい匂いがして、ようやく望むものを与えられて、ルフィは安堵に身体の力を抜いた。
---------------------------------------------------------------- サンジちゃんを誉め称えたい一心で書いたモノ。ただそれだけのもの。船長が私的にはなんか別人…。
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