小咄4
2003年10月28日(火)
どうしてもあの子の顔が見たくなって、深夜、船を飛ばした。
見えて来た月明かりに浮かぶ間抜けな船首。 見張り台の上から人影が覗いている。こんな火吹きながらやって来る船なんて他には無い。当然のことながらエースと気付いて手を振ってくる。 月の光にキラっと何か光った。よく見れば、長っ鼻君のゴーグルだ。 船に跳び移り手を振り返すと、彼は何やらラウンジの方を何度も指差している。 見ればラウンジの小窓から明かりが漏れている。まだサンジが起きている、という意味なのだろう。 (うーん、イイ人だ。是非今度サシで酒でも飲みたいもんだ)
長っ鼻君の好意を無駄にしないよう、エースはイソイソとラウンジに向かう。 そっとドアを開けて中を覗き込むと、愛しのあの子がこちらに背を向けテーブルに付いていた。 「よっ、サンジ!」 突然かけられた声にサンジがビクっと背を揺らす。 そしてなぜか一拍程間を置いてゆっくりと振り返った。 「…………エース…?」 ポカンとした幼い顔で、サンジが呟く。 長椅子のサンジの隣にまたがるように腰掛けると、エースは満面の笑みを浮かべ、正面から彼の顔を覗き込む。 「久しぶり、元気だったか?」 「エース…」 くしゃっと柔らかい髪をかき混ぜると、サンジの瞳がジワっと潤んだ。 「エースぅぅぅ!!」 いきなりがばぁっっ!!と物凄い勢いでしがみ付いて来た。 「わっ!どーしたサンジっっ?」 「会いたかったよぉぉ〜〜」 叫ぶ声はどこか呂律が回っていない。ネコの様に伸び切った姿勢で思いっきり体重を預けてくるサンジは、なんだか様子がおかしい。 てゆーかこれは……。 「…お前…酔っ払ってる?」 エースの問いにサンジはガバッと顔を上げた。良く見れば充血した目が据わっている。頬もほんのりと赤い。 そしてテーブルの上には飲みかけのワインの瓶が一本。その横には空になった瓶が転がっている。 「あぁ?俺様がこーれっくらいの酒で酔っ払うわけねーえじゃーん!!」 ―――――ベロベロだ。 威勢良く言ったはいいが、次の瞬間再びバタッとエースに倒れかかって来る。 「エースぅ…」 ズルズルとずり落ちたサンジがエースの腹にしがみつくようにして、ふにゃふにゃとなんか言っている。 「あーあ、お前がそんなに飲むなんて珍しいな」 ポンポンとあやすように背中を叩いてやると、また据わった目をしてむくっと起き上がる。完全に酔っ払いの行動だ。 「サンジ、大丈夫?」 サンジの目線が定まっていない。心配になって声をかけるが、まるでどこか遠くを見ているようだ。 あさっての方向を見つめたまま、サンジが突然ボロボロっと涙を零した。 「わわわ、サンジ?!」 訳がわからなくて、エースはオロオロとサンジの肩に手を置いて顔を覗き込む。 火拳のエースをここまで慌てさせた人間等そういるもんじゃない。 「…エースに会いてェよぅ…」 だーだーと涙を流しながら、子供のような口調でサンジが呟いた。ここに当の本人がいることに気付いていないかの様に。 「サ、サンジ?」 「エース酷ェんだ…全然会いにきてくんねえ…」 ひっく、ひっくとしゃくり上げながら、サンジの涙は止まらない。 「エースのばかやろーーー!!!」 うわ〜〜〜ん!!と再びエースの膝に顔をうずめて泣きわめく。 エースは焦ってサンジの両脇に腕を差し入れて起き上がらせた。 「サンジっ、もうみんな寝てるから!!ねっ、俺はここにいるでしょ?」 「んあ……?」 聞いてるんだか聞いてないんだか、サンジが顔をあげてようやくエースを見た。 ノロノロと両手を上げて、妙に幼い仕種でエースの頬に両手の指先で触れる。 しばらくじっと見つめた後、ふにゃっと笑った。 「エース〜…」 エースの頬に当てた両手を首に回して、甘えるように抱き着いて来る。 「あー、こりゃ夕べの夢よりリアルだー…」 「……夢じゃないよ、サンジ」 ちょっと胸が詰まる思いで背中に腕を回して抱き締めてやると、嬉しそうにすりっと裸の胸に頭を摺り寄せてくる。 めちゃくちゃ可愛い。 もうどうしよう、サンジ。どうしてくれよう。 「へへ…夢だからいいよな、俺の好きにして」 「おわっ!!サンジ?!」 エースの胸に頬を押し当てたまま、サンジがエースの胸元に指先を這わせる。 堅い腹筋を確かめるように、ゆっくりと指が下に降りてくる。 「サ、サンジ?」 らしくない行動に戸惑ってサンジの顔を覗き込めば、潤んだ瞳にハッキリと欲情の色が浮かんでいる。 白くて細長い指先がツツ…とハーフパンツの前立ての部分を滑る。0.01秒程でかっちかちになったその部分に指を這わせたサンジが、うっとりとため息をついた。 トロンとした目でそこをじっと見つめながら、布の上から軽く爪を立てて引っ掻く。 思わず体を揺らしてしまったエースに、サンジは顔を上げて嬉しそうに笑った。 「エース…しよ?」 エースにすっかり体重を預けた姿勢で、妙にあどけないような、でもやたらと色っぽい目で見上げて来る。 (やべ、鼻血吹きそう…) サンジにこんな風におねだりされて、誰が逆らえるというのだ。 いや万が一他の誰かにこんな事したら、ケシ炭にしてくれるけど………その「誰か」を。 普段のサンジは恥ずかしがり屋さんで、事を運ぶにもあれこれと気を遣う。ましてやサンジからこんなふうに誘って来る事など天地がひっくり返っても無いだろうと思っていたのに。 盆と正月と誕生日とクリスマスが一緒に来たような、ってのはこういう事を言うんだろう。 「なあ…してくんねーの?」 感慨にふけっているエースの顔を見上げて、サンジが拗ねたように眉尻を下げた顔で小首をかしげる。 下半身直撃。 「………いただきます」 エースは神妙な顔で一礼すると、サンジを抱え上げた。
普段だったら恥ずかしがってなかなかさせてくれない事をここぞとばかりにいっぱいした。サンジは何をされても嫌がらなくて、正気な時に思い出したらそのまま海に飛び込んじゃうんじゃないかってくらいエッチなことを自分からたくさん口走って、快楽に泣きながら何度も上り詰めた。 「エース…すき…っ」 最後の瞬間、サンジが掠れた、でも甘い甘い声で口にした一言は、それだけでエースを限界ギリギリまで追い詰めた。 (……神様ありがとう) これまで祈った事も無かった神に感謝を捧げながら、エースはすっかり意識を飛ばしたサンジを抱き締めて天国を見たのだった。
すかー、と膝の上で爆睡しているサンジの金色の髪を、落ち着かない気持ちで指で玩ぶ。 どうしよう、俺死ぬかも。てゆーかサンジ攫って行っちゃうかも。 どうしてこれ持って行っちゃいけねーんだよ。 こんなに可愛いのに。こんなに俺のこと好きなのに…。 ………こんなに好きなのに。
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…と、とーとつに終わる。小咄だから(え、そーなの?)。
えーと……。先週兄の腹筋見て、そんで今週兄の胸筋見て、ラブなエーサンが描きたくなったんです(何故!?)。 最近仕事が忙しくてロクな更新が出来ないこともあり、会社で待機時間を利用して小咄をひとつ。サンジがロリだよ。大変だよ。 ホントはエッチシーンもあったんですが、よく考えてみたらレンタル日記の利用規定違反じゃーん、というわけでカット。
メリッサに「今ごっつ、兄にベタ惚れなサンジと、そんなサンジが可愛くて可愛くて、もうベッタベタに甘やかしてる兄のラブラブバカップルな話が書きたいんじゃー!」と言ったら、とても冷静に「いつも書いてるじゃん」と返されました。 あ、そうかもね…。
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