「思考」...rainman

 

 

野良犬にあるもの - 2007年04月28日(土)


 

白い痩せた犬が

腹を空かしているように見えたのは

自然なことだった


友達と冷蔵庫からミルクを取ってきて

皿に入れて

鼻先に突き出してやった


アバラの浮いた汚れたそいつは

音を立てて舐めた

もう一回入れてやった

うんともすんとも言わなかった


自転車置き場の日陰で

陰の外は生きているのか死んでいるのか

やたら陽気でやたら静かで


犬はあんまり大人しくて

引き止めていたかったのに

しばらくしたら行ってしまった

うんともすんとも言わずに


野良犬にあるのは

食べられるものと食べられないもの

野良犬は他のことを考えてはいない

ように見えた

野良犬の他のことを考えることができない

ように思えた


夜どこで寝たのか

朝どこへ行くのか

昼誰と会うのか

夕方には

決まってさよならするのか


引き止めたかった

知らないことがそのまま行ってしまいそうで

引き止められても

知らないことばかりがやって来るに違いなくても

一緒に居たかった

一緒には居られなかった

そうすることが

あまりに一方的なことだと

きっと直観で感じていたに違いない

違いない



野良犬にあるもの

食べられるものと食べられないもの

ああだったらこうだったらと

考え続けるに違いない

それは我々にあるもの






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