エンターテイメント日誌

2006年03月07日(火) 検証:アカデミー賞

さて、アカデミー賞の結果が出た。

筆者の予想で的中したのは、監督賞・主演女優賞・助演女優賞・主演男優賞・助演男優賞・脚本賞・脚色賞・撮影賞・美術賞・編集賞・衣装デザイン賞・音響賞・音響編集賞・外国語映画賞・長編ドキュメンタリー賞・長編アニメーション賞・視覚効果賞・メイクアップ賞の18部門だった。

いやはや今年の番狂わせは何と言っても作品賞の「クラッシュ」だろう。しかし、「ブロークバック・マウンテン」のアン・リーは監督賞を受賞した訳だし、色々な作品に受賞が分散されて非常にバランスのとれたオスカー・ナイトだったと想う。アン・リーはアジア人の監督として初受賞であり、非常に誇らしい気持ちである。ただ残念だったのは「SAYURI」のジョン・ウイリアムズが受賞出来なかったこと。ジョンは既にオスカーを5個受賞しているので、もうあげる必要がないということか。

では作品賞受賞を記念して「クラッシュ」の感想を書こう。筆者の評価はAである。しかし、地味な作品なのでまさか作品賞を受賞出来るとは想像だにしていなかった。

この作品の素晴らしさは群像劇でありながら物語が拡散することなく、構成が計算し尽くされて緻密であるということだろう。筆者はこの脚本・監督のポール・ ハギスのが脚本を書いた「ミリオンダラー・ベイビー」は後味が悪いので好きではない。端的に言えばカタルシスがないのである。しかし、「クラッシュ」には最後に救いがあり、それは崇高でさえあると言えるだろう。だからこの点を高く評価したい。

「クラッシュ」とは文字通り交通事故の意味であり、と同時に異なる人種の衝突を指している。人は救いようがなく孤独な存在であり、他者との衝突を通してしか自己を表現出来ない。そういう風にしか生きられない哀しみがこの映画の全編を通じて通奏低音のように響いているのが素晴らしかった。

ではその衝突で生じる摩擦熱を和らげるものは何か?それこそが劇中に登場する透明なマント=相手を全面的に信頼することなのである。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]