エンターテイメント日誌

2005年06月16日(木) ミュージカル映画RENT予告編が遂に登場!

トム・ハンクスがAIDS患者を演じてオスカーを受賞した「フィラデルフィア」(1993)が公開された前後、ブロードウェイではAIDSを題材にしたふたつの作品が話題を独占した。

ひとつはトニー賞やピュリツァー賞に輝き、ロンドンのナショナル・シアターが”20世紀の最も偉大な戯曲10本”のひとつに選んだストレートプレイ「エンジェルズ・イン・アメリカ」であり、これは2003年に「卒業」「クローサー」のマイク・ニコルズが監督してテレビのミニ・シリーズとなり、エミー賞史上最多11部門受賞をはじめゴールデン・グローブ賞など総なめにした(日本ではWOWOWが放映)。

もうひとつがミュージカルRENTであり、これもトニー賞やピュリツァー賞に輝いた。1996年にニューヨークの劇場で初演される前日に、作者であるジョナサン・ラーソンが35歳の若さで亡くなったことも、作品を神格化させるのに拍車をかけた。なお、ラーソンはHIV感染者であったが、死因は大動脈瘤破裂である。

RENT映画化にも紆余曲折があった。舞台が大ヒットして映画化権を最初に手に入れたのがミラマックス。しかしなかなか具体化することはなかった。一時は「ドゥ・ザ・ライト・シング」「マルコムX」のスパイク・リー監督が名乗りを上げたが頓挫した。次にプロデューサーはロブ・マーシャル監督に声をかけたが、マーシャルは全く興味を示さず「RENTなんかよりももっと良い映画の企画がある。」と提案したのが「シカゴ」であり、これはアカデミー作品賞に輝き、ミラマックス創設以来最大のヒットとなった。RENTを持て余したミラマックスは一時はテレビ映画にしようとまでしたのだが、これも上手く転がらず、結局映画化権を手放したのがつい一年くらい前の話である。それからはトントン拍子でクリス・コロンバスが監督に決まり、一気に映画は完成してしまった。

ミュージカル映画RENT公式ページはこちらである。予告編(trailerをクリック)を是非観て欲しい。

なんといっても今回の映画化で何が凄いってブロードウェイのオリジナル・キャストをずらりと並べたことだろう。ロジャー:アダム・パスカル、マーク:アンソニー・ラップ、エンジェル:ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディア、トム・コリンズ:ジェッセ・L・マーティン、ベンジャミン・コフィン・Jr:テイ・ディッグス、そして女性ではモーリーン役のイディナ・メンゼルがオリジナル・キャストである。映画化でこれだけ揃えたのは他に例を見ない。筆者はブロードウェイでアダム・パスカルが「アイーダ」のラダメス役で出演しているときに観劇し、その野性的な容姿と圧倒的歌唱力に痺れた。今や伝説となったアダム・パスカルのロジャーが映画で見られるなんて感慨もひとしおである。テイ・ディッグスは映画「シカゴ」でピアニストを演じ、端役ながら実に存在感があり、格好良かった。彼のパフォーマンスも実に愉しみである。

映画に若干の不安があるとすれば、まず初演から9年が経過して、オリジナル・キャストが当初の若々しさを保っていられるのかということと、AIDSという病気は既にアメリカでは感染爆発の時期が過ぎて、今では治療法が確立している=つまり映画化する時期を失したのではないかということである。そして監督がクリス・コロンバスであるということも気になるところ。コロンバスは「ホーム・アローン」「ミセス・ダウト」やハリー・ポッター・シリーズなどどちらかと言えばお子さま向けの映画を撮ってきた人だし、ミュージカルも今回初挑戦の筈だ。・・・しかしながら、予告編を観る限り、そんな心配も杞憂に終わるだろう。

RENTは北米で今年の11月に公開予定。そして12月には、こちらもブロードウェイ・オリジナル・キャストをずらりと並べ、アカデミー賞を狙う「プロデューサーズ:The Movie Musical」(邦題の正式タイトルは未定)の登場である。2005年、ミュージカル映画は今まさに豊饒の時を迎えようとしている。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]