エンターテイメント日誌

2005年04月16日(土) スコセッシがオスカーを手にするのはいつ?<アビエイター>

マーティン・スコセッシ監督は実に気の毒な人である。彼のキャリアからすれば既にオスカーを受賞していても当然なのに、一度も監督賞を手にしたことがない。カンヌでグランプリを受賞した「タクシー・ドライバー」(1976)をはじめとして80年代の最高傑作と讃えられるボクシング映画「レイジング・ブル」(1980)、マフィアもの「グッド・フェローズ」(1990)などハリウッド映画史に燦然と輝く作品を撮ってきた人である。個人的にはニューヨークの貴族社会を描いた「エイジ・オブ・イノセンス」(1993)もヴィスコンティ映画みたいに絢爛豪華で結構好きだったなぁ。そう言えば、マイケル・ジャクソンの"Bad"プロモーション・ビデオを撮ったのもスコセッシだった。

スコセッシの代表作としてはアメリカの評論家は「レイジング・ブル」を挙げ、日本では「グッドフェローズ」を支持する人が多いが、筆者は彼の最高傑作は「タクシー・ドライバー」だと今でも想っている。あの映画でのロバート・デ・ニーロとジュディ・フォスター(当時14歳)の演技には凄みを感じたし、あれが遺作となったバーナード・ハーマンの音楽も実に心に滲みた。映像や編集は研ぎ澄まされた刃のような切れ味があった。

スコセッシは俗にウディ・アレンらと同様に<ニューヨーク派>と呼ばれているが、確かに彼の傑作は現代のニューヨークを舞台としたものが多い。「ギャング・オブ・ニューヨーク」も勿論NYが舞台だが、あれが駄目だったのは時代設定が19世紀だからだ。やっぱりギャングはアルマーニのスーツとかをビシッと着てないとさまにならない。

で前置きが長くなったが「アビエイター」の評価はC+である。文芸大作としての風格は備えているが、はっきり言ってお話が詰まらない。本作でスコセッシがまたまたオスカーを逃したのは実に残念ではあるが、まあ正直なところこの程度の作品で受賞しなくて良かったという気持ちもある。スコセッシの持ち味が発揮されていない。だって舞台がニューヨークでもなければ現代の物語でもないしね。「ギャング・オブ・ニューヨーク」同様、上映時間が長すぎるのもいただけない。間延びするんだよね。

だからまもなく撮影が開始される新作"The Departed "の方をむしろ期待したい。香港産フィルム・ノワールの大傑作「インファナル・アフェア」のリメイクであり、久々の現代マフィアものである。まあ舞台はボストンの裏社会になるそうだが、スコセッシお得意の分野だからね。オリジナルでトニー・レオンとアンディ・ラウが演じた役をリメイク版ではレオナルド・デカプリオとマット・デイモンがそれぞれ演じ、なんとマフィアのボス役にジャック・ニコルソンが配役されているそうである。題材的にオスカーは難しそうだが、実に今から愉しみである。



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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]