エンターテイメント日誌

2004年08月14日(土) 大林宣彦監督の最新作は14分の短編映画である。

大林宣彦監督が久しぶりに音楽アーチストのプロモーション・ヴィデオ(PV)を撮った。まだ「愛は勝つ」が大ヒットする前の無名時代のKANのPV「BRACKET」以来、実に16年ぶりである。余談だがKANは大林作品「おかしなふたり」「夢の花・大連幻視行」「異次元OKAYAMA・モモとタロのかくれんぼ」等の音楽を担当している。

CANCIONとはスペイン語で<うた>という意味を持つ言葉で、古谷智士と繁本穣のふたりからなるユニット。大林映画ファンだったふたりが、アコースティックギターを持って監督に直談判し、目の前で「嘘つき」など3曲演奏したところ、大林監督は「君たち、僕を泣かしたね。」とつぶやき、申し出を快諾したという。

今回制作されたのはPVだけではなく、ふたりを主演とする14分の短編映画も同時に制作された。その短編映画本編とヴィデオ・クリップはここ(クリック!)から観ることが出来る。

大林監督は「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の尾道三部作が有名だが、実は新・尾道三部作の掉尾を飾る「あの、夏の日〜とんでろじいちゃん」以来6年間、尾道から遠ざかっていた。監督の古里に対する想いと、尾道市の街づくり(街おこし)の方向性に齟齬が生じてきたからである。

筆者も大学生の頃から何十回となく尾道を訪れ、ロケ地巡りをしたり、実際に大林映画のロケを見学させて貰ったりしてきたのだが「転校生」に登場した鄙びた風情のあった尾道駅周辺も再開発で巨大なビルが建ち並ぶよそゆきの顔をした見知らぬ面持ちになってしまったし、「さびしんぼう」や「あした」等に登場した雁木(がんぎ)は今はもうない。そんな風にして時と共にいつしか僕の足も尾道から遠ざかっていった。

大林監督は「なごり雪」を撮った大分県臼杵に新たな日本の古里を見いだし、臼杵から発信する映画作りを決心されたばかりである。なんと土地まで購入されて映画の名残館「クランク・イン!」をオープンされている。

そんな、ある意味では尾道と決別された大林監督が久しぶりに古里でキャメラを回す。CANCIONのふたりが「転校生」で小林聡美が駆け抜けた通学路を、「時をかける少女」で原田知世がタイム・スリップした神社を、「さびしんぼう」で富田靖子が自転車で走り込んだフェリーを、そして「ふたり」で瀕死の中嶋朋子と石田ひかりが手を握りあった坂道を彷徨う。これがどんな意味を持つのか、果たして尾道映画再生へと繋がっていくのか、その答えは貴方自身が視聴してじっくりと考えてみて下さい。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]