エンターテイメント日誌

2004年07月06日(火) セカチュウを凌駕する純愛映画現る!

大林宣彦監督の「理由」など傑作を送り出しているWOWOWのオリジナルドラマ製作プロジェクト、dramaWで放送された「恋愛小説」(←クリック!)はその出来の良さが視聴者からの大反響を巻き起こし、遂に劇場公開された。単館ではあるが渋谷シネ・ラ・セットで現在上映中である。もし貴方が東京近郊在住でWOWOWに加入していないのなら、何はさておき渋谷に駆けつけるべきである。「冬のソナタ」やセカチュウこと「世界の中心で、愛をさけぶ」など世の中はかつてない<純愛ドラマ・ブーム>であるが、「恋愛小説」は究極の純愛映画、正真正銘の決定打であるとここに断言しておこう。なお筆者の感想はWOWOW放送時にハイビジョン・テレビで視聴した時のものであることを予めお断りしておく。

「恋愛小説」の評価はA。まず「GO」で直木賞を受賞した金城一紀の原作を見事に料理し、原作とは異なる鮮やかな結末を持ってきた脚本の坂東賢治の手腕が素晴らしい。愛する者たちを次々と死に至らしめてしまう数奇な運命を持ち、自分を<死神>と信じる主人公が幼年時代に水たまりに浮かんだ蝶々の死骸を見つめる場面で、水に油が浮いているとか、月光浴をする幻想的な場面、あるいは電車で再会した友人に遺言書作りを依頼する場面のふたりの微妙な距離感、さらにヒロイン瑞樹が彼のノートに電話番号を書くときに万年質のキャップを口にくわえる仕草など、そういった細やかなディテールの積み重ねがこの映画の最大の魅力になっている。これは脚本の完成度の高さと共に森淳一監督の繊細な演出の賜物だろう。

映画の新人賞を総なめにした「阿弥陀堂だより」とは全く異なる生き生きとしたヒロイン像を創り上げた小西真奈美も実に魅力に溢れている。このヒロインが初登場するのが映画開始38分後という焦らし方も心憎いし、その意表を突く登場のさせ方も良い。また、いかにもエンニオ・モリコーネ風ではあるが、浪漫的で美しい音楽(作曲:佐藤直紀)も印象に残ったことを追記しておく。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]