エンターテイメント日誌

2004年06月16日(水) <トロイ>とか、ハリウッド映画落穂拾い

「シルミド」のレビューも書かなくちゃいけないのだが、遅きに失するといけないのでここで溜まっていたものを一部放出する。

「トロイ」評価C:

可もなく不可もなしといったところか。スペクタクル史劇としての風格はある。しかし、「ロード・オブ・ザ・リング」などで壮大なモブ・シーン(群集場面)を見慣れた目では、最早ちょっとやそっとのCGによる特撮で目を奪われることはなくなってしまった。これはある意味不幸なことである。物語りも詰まらなくはないが、アキレスの恋は蛇足だという感が強い。トロイとスパルタの戦争に関係ないし。

むしろこの映画で最も興味深いのは音楽面である。一年以上この映画に携わってきた作曲家のガブリエル・ヤーレ(「イングリッシュ・ペイシェント」でアカデミー賞受賞)はポストプロダクション終盤になって、試写での不評を理由に突如解雇された。急遽代役に登板したのが「タイタニック」「ビューティフル・マインド」のジェームズ・ホーナーである。なんとホーナーはスコア全曲をたった13日間で作曲、12日で録音という記録を打ち立てた。恐るべき職人技である。これが案外悪くなくて聴き応え充分、迫力満点の音楽だったので感心した。

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「ドーン・オブ・ザ・デッド」評価B-:

ロメロの「ゾンビ」リメイクである。「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」とそれに続く「ゾンビ」という映画は トム・サビーニの精巧な特殊メイクとか<生きる屍>の生態としての決まりごとを決定付けたという意味では価値があるが、それ以上のものは何もない。映画としてテンポが弛緩していて凡庸だし、面白みとか興奮に欠ける。その点、今回の若手監督が手がけたリメイクは畳み込むようなスピード感溢れる編集が見事だし、見応えがある。兎に角凄まじい高速で走るゾンビ!これに尽きる。ただ、観客を悪夢の中に無理やり引きずり込むような冒頭10分間は圧巻なのだが、主要人物たちがショッピングモールに終結したあたりから、物語が停滞する感は否めない。はっきり言ってこんなB級映画に主人公たちの人間的葛藤なんてどうでもいいことだし、早く先に進んでくれと苛々する。また、ラスト、辛くも島に逃げ延びた主人公たちに待ち構えているものまで描いてしまう必要はなかったんじゃなかろうか?霧に包まれた島に向かうヨットのロングショット。その言い知れぬ不安感で終わったほうがより一層映画としての余韻が残った筈である。つまりこの作品は冒頭10分のみ観ればそれで必要充分ということである。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]