エンターテイメント日誌

2004年05月15日(土) 逃した魚は大きかった・・・

ティム・バートン監督「ビッグ・フィッシュ」の評価はA-である。

これだけ優れた映画なのに米アカデミー賞では無視され、ダニー・エルフマンが作曲賞にノミネートされただけというのはどう考えても解せない。不当な評価である。受賞は無理としても少なくとも作品賞と監督賞にはノミネートされる価値のある映画ではなかろうか?凡庸なメロドラマ「コールド・マウンテン」よりもこちらの方がよっぽど良いんだけどなぁ。

まあ実を申せば物語の前半は多少もたつく感はある。大体ティム・バートンに親子の情愛とかヒューマンな物語は似合わない。オスカーを意識した文芸作仕掛けがむしろ映画を窮屈にしている印象を受ける。しかし、怒濤のラストは彼らしいファンタジックな展開となり、想わず涙腺がゆるんだ。それから何と言っても一面に咲き誇る水仙の花畑の場面がとても奇麗で印象的だった。

バートンがディズニーに雇われていたアニメーター時代の処女作、怪奇映画の名優ヴィンセント・プライスへ熱きオマージュを捧げた「ヴィンセント」やフランケンシュタインの怪物への恋文「フランケンウィニー」(これら二作品は「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」コレクターズ・エディションDVDに収録されている)の時代から最近の壮大なる失敗作「猿の惑星」まで、一貫してテーマにしてきたのは異形の者たちへの尽きることのない愛情である。そしてそれは「ビッグ・フィッシュ」にもぴったりと当てはまる。魔女・巨人・サーカス団・シャム双生児などバートン好みの登場人物たちが沢山登場してきて映画を豊饒にしている。

ダニー・エルフマンの音楽は見事に映画に寄り添ってはいるがいささか地味だなぁ。彼は「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のような凄い名曲が書ける人なんだからもう一頑張りして欲しかった。しかし、彼のような才能のある作曲家が未だにオスカーを獲れないことが悔しくてならない。別人が作曲した主題歌がエンドロールで唐突に流れ出すのには違和感を感じた。エルフマンが書けばいいのに。スタジオの要請なのだろうか。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]