エンターテイメント日誌

2003年05月17日(土) ミュータントの渡り鳥、ウルヴァリン

ドキュメンタリー映画「WATARIDORI」は息を呑むほど映像の美しい映画である。ジャイロコプターから捉えた超低空飛行による、羽ばたく鳥達の雄姿が素晴らしい・・・しかし、である。僕はこの映画の構成に疑問を感じた。何だか脈絡がないのでだんだんとその映像に退屈してくるのである。たとえば春夏秋冬の移り変わりにあわせて編集するとか、北極から南極へと南下する順序に編集するとか、もっと見せ方の工夫の仕方があったのではなかろうか。

さて、本題にはいる。「X-MEN 2」である。僕は基本的にアメコミ(アメリカン・コミックス)を原作とする映画は単純過ぎて退屈だと想っている。フラッシュ・ゴードンやスーパーマン然り、スパイダーマン然り。最近ではデアデビルにしても非常に安っぽい印象はぬぐい去れない。今度「いつか晴れた日に」「グリーン・デスティニー」を撮った台湾の巨匠、アン・リー監督が「超人ハルク」に挑んだのだが、予告編(←クリック)を観る限りどう考えても<トンデモ映画>に仕上がっているとしか想えない。

手塚治虫以降の日本の漫画は飛躍的な進歩を遂げ、いまや世界に比類の無い先進国である。対してアメリカのそれは、もう余りにも低次元であり、比較の対象にもならない。だからアメコミの映画版もろくな作品が出来る筈がそもそもないのである。

しかしその中では比較的「X-MEN」は面白かった。「ユージュアル・サスペクト」を撮ったインディペンデンス系のくせ者、ブライアン・シンガーが監督に起用されたことに加え、ミュータントと人間の対立に<異文化の衝突>という寓意を盛り込んだ物語展開がなかなかスリリングだった。ところが今回の続編はいまひとつ平板で退屈した。それぞれのどうでもいいような恋愛模様が強調され、それが物語の焦点をぼかし、間延びするのである。

ヒュー・ジャックマンやオスカーを受賞したハル・ベリーなど前作以降大スターになった役者もいて、さらにアラン・カミングの参入など俳優陣は実に豪華だ。しかし、これだけスターをそろえておきながらその個性を十分に活かし切れていないという憾みもある。特にハル・ベリーはあのゴージャスな肉体をもっと晒さなくっちゃ出演する意味がないとさえいえるだろう。

しかし、「シカゴ」出演以前のゼタ=ジョーンズ同様、ヒュー・ジャックマンが唄えるスターだということを知らない人が多いのは真に残念だ。彼には「オクラホマ!」などミュージカルの舞台経験があり、なかなか美声の持ち主なのだが、それを活かせる場が映画にないのが勿体ない。現在プロジェクトが進行中のミュージカル映画版「オペラ座の怪人」で、ファントム役にジャックマンの名が有力候補として挙がっていると聞く。是非実現することを期待したい。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]