エンターテイメント日誌

2002年03月26日(火) 宴(オスカー・ナイト)のあとに+「彦馬がゆく」の薦め

第74回アカデミー賞授賞式が終わった。今年の僕の予想は本命のみで10部門(作品、監督、助演女優、脚本、脚色、美術、視覚効果、作曲、長編アニメーション、短編アニメーション)的中。対抗を合わせると18部門になる。

特に長編アニメーションは作品的にシュレックの圧勝でピクサー社は短編部門で受賞するだろうという分析が正しかった事を誇りに思う。しかし、やはり自信がなかった主演女優賞と主題歌賞はものの見事に外れたなあ(^^;。主題歌賞を受賞したランディ・ニューマンは16回目のノミネートにして初の受賞だそうだから、心からおめでとうと祝福したい。ちなみに僕がランディの曲の中で一番好きなのはミロシュ・フォアマン監督の「ラグタイム」の音楽である。

今年のオスカー・ナイトは「ブラック・パワーの年」として後々まで語り継がれることになろう。なんといっても黒人では久しぶりの主演男優賞受賞、そして黒人初の主演女優賞である。おまけに黒人として史上初主演男優賞を受けたシドニー・ポアチエが名誉賞を受け出席し、彼が見つめる中での出来事であった。司会も黒人のウーピー・ゴールドバーグで、一寸鬱陶しいくらい(^^;「アフリカ系アメリカ人」という言葉を連発していた。ラッセル・クロウは余程2年連続受賞に自信があったのだろう。ディンゼル・ワシントンの名前が読み上げられてから暫くムッとした表情をしていて、見ていて可笑しかった。英国アカデミー賞最優秀男優賞を受賞したときは、彼がスピーチしている途中でCMを挟まれたことに腹を立ててプロデューサーに殴りかかったそうだから(後に公式に謝罪)、今夜のラッセル君は荒れるだろうな(笑)。

ロン・ハワードの監督賞受賞は僕には確信があった。というのは彼は「アポロ13」の時、全米監督組合協会賞を受賞したにもかかわらずアカデミー賞にはノミネートさえもされなかったのだ。これは前代未聞の不祥事であった。実際「アポロ13」の演出は傑出したものであった。その年、結局アカデミー監督賞を受賞したのはあの愚鈍な「ブレイブ・ハート」を撮ったメル・ギブソンであった。完璧なミス・ジャッジ。そして今宵、その不当な扱いに対する贖罪をアカデミー会員は行ったのである。「カラー・パープル」でスピルバーグを無視した償いを後に「シンドラーのリスト」と「プライベート・ライアン」で行ったように。

それにしても僕が危惧したとおり、外国語映画賞を確実視されていた「アメリ」が受賞できずボスニア・ヘルツェゴビナの現実を見つめる「ノー・マンズ・ランド」に持っていかれようとは・・・。テーマ主義に引きずられがちなアカデミー会員の弱点がここに露呈してしまったと言えよう。社会的メッセージを持った映画が風化し色褪せるのは意外と早く10年後には人々から忘れ去られる運命にある。あの幸福感に満ちた「アメリ」こそ100年後も人々に語り継がれ続ける真の名作であるのだと僕は信じて疑わない。

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さて、話題は変わるが3/27(水)にWOWOWで三谷幸喜さん作の舞台「彦馬がゆく」が生中継される。三谷さんは映画「12人の優しい日本人」「ラヂオの時間」「みんなのいえ」やテレビ「王様のレストラン」「古畑任三郎」などで知られる天才コメディ・ライターである。現在彼が脚本を書いた映画「竜馬の妻とその夫と愛人」が市川準監督の手で撮影中。しかし三谷さんの真骨頂は舞台作品にこそ有る。現役の劇作家としてニール・サイモンを軽々と超え世界NO1の実力と面白さだと僕は自信を持って断言しよう。その彼の最高傑作が「彦馬がゆく」なのである。僕は前月大阪で観たのだが、奇想天外な発想で幕末を描きながら爆笑の連続で息もつかさず観劇している内に最後はホロリと感動させられる、そういう希有な完成度を誇る芝居であった。是非この感動を多くの人と分かち合いたい。WOWOWに加入されている方はこの機会を決して見過ごされぬよう。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]