エンターテイメント日誌

2002年03月21日(木) ディズニーよ、何処へゆく?

19日付のニューヨーク・タイムズによると、ディズニー・プロダクションは、アニメーション部門の従業員250人に対して、今後1年間に解雇するかあるいは契約更新を行わない、と通告した。いわゆるリストラである。ウォルト・ディズニー・アニメーションは99年のピーク時には2200人の従業員を抱えていたが、現在は約1500人になっているそうだ。

これは何を意味するのか?まずCG等コンピューターの発達により、以前のような数のアニメーターが必要なくなったということもあるだろう。しかしこれだけ大幅な人員削減だ。それだけが理由ではあるまい。「モンスターズ・インク」等、ディズニーが配給しているピクサー社の作品が絶好調で、さらに今年の夏全米公開を控えている「千と千尋の神隠し」等ジブリ作品の配給というソフトも手に入れた、つまり自社製品を作らなくても他社の作品で商売が成り立つので今後は自社での製作に力を入れないという姿勢を表しているのでは無かろうかと僕は危惧するのである。

ウオルト・ディズニーの死後、ディズニー・プロはろくな作品もなく、長期低迷を続けた。そしてディズニー・ルネッサンスとも呼べる黄金期が再び訪れる。作詞家ハワード・アシュマンと作曲家アラン・メンケンによるアニメーション・ミュージカルの登場である。「リトル・マーメイド」以降、アカデミー作曲賞と主題歌賞はディズニー作品が独占する時代が続き「美女と野獣」はアニメーションとしては初のアカデミー作品賞にノミネートされるという栄誉を受けた。

しかし「アラジン」作詞半ばにしてアシュマンがAIDSに冒され急逝。ディズニー・ルネッサンスのもうひとりの立て役者、アニメ製作部門総責任者であったジェフリー・カッツェンバーグが会長兼CEOのマイケル・アイズナーと対立して、ディズニーを退社してドリーム・ワークスをスピルバーグらと共に設立した辺りから歯車は狂いはじめる。アシュマンを失ってからも暫くの間アラン・メンケンはディズニーのおかかえ作曲家として活躍するが「ヘラクレス」を最後にディズニーを離れた。折角「ミュージカル・アニメーション」という独自の伝統を継承したからこそ、ディズニーは立ち直ったのに、最近では自らその魅力を放棄してしまったのである。その結果が「アトランティス」の体たらくである。興行的に惨憺たる成績で、勿論今年新設されたアカデミー賞長編アニメーション部門でも完全に無視された。独自性もなくして高品質なジャパニメーションに太刀打ちできる筈もなかろう。

奢れるものは久しからず。ディズニー・プロは今こそ真剣に自己を見つめ直す時期に来ているのでは無かろうか?やっぱり老舗には頑張って貰わないと寂しいもの。

<追伸>恒例のアカデミー賞直前大予想は、土曜日に掲載予定。乞うご期待!


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]