エンターテイメント日誌

2002年03月11日(月) 炸裂するリンチ・ワールド

僕はデビッド・リンチ、ケン・ラッセル(「恋する女たち」「ボーイフレンド」「恋人たちの曲・悲愴」「狂えるメサイア」「トミー」)そしてデビッド・クローネンバーグ(「ビデオドローム」「ザ・フライ」「裸のランチ」「イグジステンス」)を称して「世界三大変態監督」と呼んでいる(^^;。加えて日本の監督を挙げるなら「盲獣」「卍(まんじ)」の増村保造かな。

デビッド・リンチは前作の「ストレート・ストーリー」が、その名の通り余りにも直球過ぎて物足りなく、「リンチの裏切り行為」と憤っていたが(^^; 今回の新作「マルホランド・ドライブ」を観て、「ブルー・ベルベット」そして「ツイン・ピークス」のリンチがさらにパワー・アップして帰ってきた!と手放しに歓んだ。

いや〜摩訶不思議で怪しげ、もとい、妖しげなリンチ・ワールドに観ている間に呑み込まれ、出口のない迷宮を彷徨うような体験をした。わけ分かんなかったけれど(^^;、超弩級の面白さ。唐突に謎の人物が現れて、いつの間にか物語上から消えてゆく。でも彼らに囚われてはいけない。多分リンチ自身がその説明をするつもりが最初から毛頭ないのだ(^^;。この映画の成り立ちそのものが、もともとTVシリーズのパイロット版として作られるも結局お蔵入りになり、映画として完結させるために追加撮影が行われたという事情も大いに影響があるだろう。出来ればシリーズとして、もっと細部のエピソードを詳しく観たかったなぁ。

マルホランド・ドライブで事故にあった'リタ'が傷を負ってハリウッドの街へ下り、力つきるのが「サンセット大通り」というのが象徴的である。そしてハリウッドの内幕を赤裸々に描くという点などビリー・ワイルダー監督の傑作「サンセット大通り」とこの映画には共通点は多く、特に映画「マルホランド・ドライブ」に仕掛けられた謎の答えそのものが「サンセット」のクライマックスに密接に結びついており、リンチがワイルダーのこの作品を意識して撮ったことは間違いのない真実だろう。

ちなみに公式HP( http://www.mulholland.jp/index_f.html )に映画の最後に提示されるキー・ワ−ドを打ち込むと映画評論家の今野雄二さんによる詳細な作品解読を読むことが出来て、この謎めいたーというか謎だらけの(^^;映画をより深く理解する上で大変役立った。ただ今野さんの<白昼夢説>が正しいのか、はたまたこれは<パラレル・ワールド>が描かれているのか、真相は定かではない。それは観る者ひとりひとりの解釈に委ねられている。さあ、もう一回観なくちゃ!

主演のナオミ・ワッツが驚くべき好演。ブロンドが映える気品のある女優さんで、往年のグレース・ケリーを彷彿とさせた。だからこそ映画のクライマックスで彼女が行う行為がより衝撃的なのである。彼女は「リング」のハリウッド版リメイクでも主演するそうで、今から大いに楽しみだ。


 < 過去の日誌  総目次  未来 >


↑エンピツ投票ボタン
押せばコメントの続きが読めます

My追加
雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]