ちきちき日誌




2004年07月25日(日)
善と悪。

※ネタバレあり。注意。


今日は超有名な『ジーキル博士とハイド氏』(The Starange Case of Dr.Jekyll and Mr.Hyde)です。

善と悪・二重人格の代名詞ともなっているので、このお話、読んだことないヒトでも結末知ってる方はかなりの数いるんじゃないでしょか。

著者が数日で書き上げただけあって、とってもペラい本です。
あらすじも言うまでもないってカンジです(苦笑)。
薬品によって善悪が入れ替わってしまう2重人格者の破滅を描いた怪奇小説です。

話の結末と大筋は知ってるんですが、一体どういう経由で、どうしてこんな結果になったのか、ハイドは一体何をしたのか、それだけ知りたかったので古本屋で見かけたのを機に読んでみました。

ハイド氏は悪───というよりは道徳観念ほっぽらかして自分の性に正直に生きてる完全なるエゴイストというだけで、現在の道徳観念の薄い、さらにもっと酷い悪事の物語を見慣れている我々からしたらあんまりたいした悪事はしていません。
女の子踏んづけたりとかマッチ売りのマッチ跳ね除けてバラまいたりとか周りの人々に悪態ついたり怒鳴ったり、といった類です。(…まぁあとは文章に記述こそないですが女遊び系もやったと思われます…)

要するに徳が高く名声のあるジーキル博士には醜聞となってしまうという事を彼の欲求のかわりにやってくれた、という訳で。


事が大きくなってしまうのは、ハイド氏が大きな悪事──ある政治家の殺人を犯してしまってからです。(ステッキ回転で撲殺/苦笑)

指名手配となったハイド氏はジーキル氏の中に身を隠し、二度と姿を現すことはない──と思われていたのですが、エゴの誘惑に駆られた意志の弱いジーキル氏はまたハイド氏を召還(?)してしまいます。
召還の度に薬量が多くなっていき、しまいにはジーキル博士でいられる時間の方が少なくなっていきます。
そして、最後に待っていたのはジーキルとしての意識の消滅と、ハイドの肉体の死(自殺)でした。

最後は博士の告白の文章(手紙)で終わっており、事後談、というものはこの作品にはありません。
人間の弱さ、誰もが内に隠しているエゴ、その表現ができるハイド氏という別の人間を生み出してしまったために、その快楽に打ち勝つことの出来なくなったジーキル博士の哀れを静かに綴って終わっています。


善と悪、とよく言われていますが、もしわたし達がジーキル博士のような手段をみつけてしまったら…?
ジーキル博士は普通の弱い、我々の同朋──人間だとおもいます。

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