HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館

夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2004年07月26日(月) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『魔猫』

☆猫よ、猫。

ホラーと幻想のなかに形を現す、 意志と力をもつ猫たちのアンソロジー。

選ばれた猫作家は、総勢17人。スティーブン・キング、スーザン・ウェイド、 ダグラス・クレッグ、ニコラス・ロイル、 ウィリアム・バロウズといった面々の短編を、 タニス・リーが中世の魔女狩りを描いた 『顔には花、足には棘』で締める。 キングとバロウズは再録だが、他の作品はすべて書き下ろし。

ジェイン・ヨーレンの詩、『ぺちゃんこの動物相 第37:猫』が 挿入されたことは、アンソロジー作家たちの猫への思いを 象徴するかのようだ。ホラーでダークで、猫への愛情と人間への 憤りに満ちた詩である。

一、 痕跡: 検死官が見たものは、 舗装道路に残された 猫ちゃんの失敗の跡、 命の汚れ、 ただの染み。 (引用)

それにつけても、猫とは古来よりミステリアスな生きもの。 バステト信仰を生み出した古代エジプトでは、 猫は安産の神であり、 殺せば死罪に問われたという。 現代も猫にとってはじゅうぶん受難の時代だが、 中世までのヨーロッパ各地でも、相当残酷な猫いじめが 横行していたのだと、ダトロウの前書きで知る。

ときどき、背筋が凍るような方法で猫を虐待する 男(偏見があるかもしれないが、ほとんどは男である)の ニュースが報道されている。 しかし、神とあがめたエジプトでも 悪魔の手先とおとしめたヨーロッパでも、 猫への恐れと不安、その根源にある感情は、 いつの時代、いつの場所においても、 人間についてまわっているのかもしれない。

このアンソロジーには、ポーの『黒猫』以来の伝統となった 壁のなかの猫も登場するし、絵のなかの猫、 限られた人だけに見える猫など、 ほとんどすべてが、幻想の世界から 現実の世界に現れ出た猫たちである。

最後のタニス・リー作品の劇中劇ではないけれど、 かつての古典的な猫話では、猫たちは 王族に属していた。

しかし、現代のホラーでは、猫たちは、 どうやら、しいたげられた者、つまり 「子どもたち」に属しているようなのだ。 このアンソロジーのなかにも、追いつめられた 孤独な子どもと猫の関係を描いた作品が何点かあり、 興味深かった。

そしてどんな幻想的なホラーよりも、 生きた猫が虐げられる現実が、 猫好きにとっては一番おそろしい。 (マーズ)


『魔猫』編者:エレン・ダトロウ / 訳:佐々木信雄 他 / 出版社:早川書房1999

2002年07月26日(金) 『オペラ座の怪人』(その3)
2001年07月26日(木) 『九つの殺人メルヘン』

>> 前の本蔵書一覧 (TOP Page)次の本 <<


ご感想をどうぞ。



Myエンピツ追加

管理者:お天気猫や
お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]

Copyright (C) otenkinekoya 1998-2006 All rights reserved.