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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年06月18日(水) --

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「サラシナ」

☆あのひとに、会いたい。

青々とのびているひょうたんの蔓。
その、たった一本の茎を、つい、
手がすべって、ちょきんと根元から切ってしまった。
だれにでも起こりえそうな最初のページの出来事が、
時間を超えた冒険へと、少女サキをつれだしてゆく。

日本を舞台にした歴史ファンタジーで、
藤原氏とその周辺は、変わらず人気が高い。
強きものと、弱きもの、心やさしきものたちが
生れ落ちたそれぞれの立場で、入り組んだ「藤棚」のごとく
歴史を塗り替えてゆく。
そこに悲劇も生まれるが、奇跡もまた顔を出す。

現代に暮らす平凡な中学生、サキは、ある夜、
ひょうたんにみちびかれ、古代の日本で男に出会う。
不破麻呂と名乗るその男は、サキと再び出会うことを
強く願うようになる。
家に戻ったサキも、不破麻呂との再会を夢見て、
やがてふたりは、再び、時間を超える。

そういう意味では、猫や的に「タイムスリップ・ロマンス」でも
あるのだが、サキが中学生であるせいか、
恋愛の生々しさは感じない。
(なんとなく不破麻呂のイメージは江口洋介)

そこには歌がある。
本書のすみずみまで満ちている、古きあの歌。

わが国に 七つ三つ
つくりすえたる 酒壺に
さしわたしたる 直柄(ひたえ)のひさご
南風吹けば北になびき
おっとっと…
(/引用)

おかしみのあるこの歌に、新しい意味、生き生きとした力を
惜しみなく与えてくれた物語、
ただなんとなく生きることから踏み出し、旅立った人たちの
物語に、ひょうたんのなかに入っているという
天の川の流れを、しばし想う。

この本は、猫やのお客さんから教えていただいた。
タイトルがなぜサラシナなのか、
ずっと気になっていた本である。
(マーズ)


「サラシナ」 著者:柴田勝茂 / 絵:佐竹美保 / 出版社:あかね書房2001

2002年06月18日(火) ☆『忘れたハンドバッグ』/ Aardman collection
2001年06月18日(月) 『ウィーツィ・バット』

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