HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館

夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年09月12日(木) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『西風のくれた鍵』

もしこの短編集を10年前に読んでいたら、 きっと、一番ひかれたのは「雪むすめ」だろう。 幼い兄弟が雪の日につくった雪人形が、 北風によって命を得、北の白い宮殿の王女となる。 でも、自分を創ってくれた少年が忘れられなくて・・・

今、私がひかれるのは、 「鋳かけ屋の宝もの」や「幻のスパイス売り」である。 正直者は報われる、とでも言えばいいのか、 日々のまじめな労働が報われるお話。

スパイス売りのおばあさんの歌声は、 どこからただよってくるのだろう。

ナツメグに シナモン
ジンジャーに キャラウェイ
インディーズ諸国の スパイス
さあ 買いにおいで

作者のアトリーが、心にためこんで大切に慈しんで きたであろう英国やスコットランド、アイルランドの昔話が、 こんなふうに熟されて、オリジナルのお酒になる。 誰でも飲めて、誰でも楽しめるけれど、 同じ命をもったお話は、異文化の私たちには創れない。

そして、こういう物語を読むときの楽しみが、 訳注としてまとめられた巻末の付録である。 それが豊かであるほど、 異なる文化の宝を味わう楽しみもまた深まるように 思えるのだ。 読み流していたら気づかないような、言葉の裏にあるもの。 そのためには、翻訳者の奔走もまた必要なのだけれど。 (マーズ)


『西風のくれた鍵』 著者:アリソン・アトリー / 訳:石井桃子・中川季枝子 / 出版社:岩波少年文庫

2001年09月12日(水) 『R.P.G』

>> 前の本蔵書一覧 (TOP Page)次の本 <<


ご感想をどうぞ。



Myエンピツ追加

管理者:お天気猫や
お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]

Copyright (C) otenkinekoya 1998-2006 All rights reserved.