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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年07月03日(水) --

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「穴 HOLES」

☆すごく、すごく「因果」な現代の寓話。

別にイソップ物語のように、教訓がくっついているわけではないけれど、
「約束はきちんと守ろう」とか、「親の因果は子に巡り」
(というよりは、ひいひいじいさんの因果かな?)とか、
そんなことを教訓としてきっちりと心に刻んだ。
アメリカ人にとっては「ほら話」のような位置づけらしいが、
なんかこう、わたしにとっては、「アフォリズム」というか。
教訓話というか、人生への警句が含まれているようないないような…。
でもまあ、それはそれとして。

スタンレー・イエルナッツ(Stanley Yelnats)はとことん
ついていない少年である。
ついていないのは、スタンレー少年だけでなく、
イエルナッツ家全員の男たちにいえる。
それというのも、すべてひいひいじいさんが豚泥棒をしたせいで、
子々孫々まで、その時の呪いがかかっているかららしい。
おかげでスタンレーまで、無実の罪でテキサスにある非行少年収容所、
キャンプ・グリーンレイクに送られてしまうことになる。
スタンレーのここでの仕事は、雨一滴降るらない荒涼とした不毛の地に
毎日毎日、ただひたすらに穴を掘り続けることだった。
本来なら、やりきれないハードな話なのだろうけど、
砂漠が舞台のせいか、非常にドライで淡々としている。
全然、じめついたところ、ウエットなところがない。
かつては、いじめられっこで、収容所でも一番の下っ端のスタンレー。
つらい日々ではあるけれど、やはり彼にもじめじめしたところがなくて、
目の前の悲しみや苦しみにも、スタンレー家特有のユーモア、
「それもこれも、あんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒のひいひいじいさんのせい」
だと、からりとあきらめきることができるのだ。

このいじめられっ子で、冴えないふとっちょのスタンレーが、
キャンプ・グリーンレイクの極限で、心身共に鍛えられ、
友情と勇気に目覚めていく。

非常に奇妙な味わいの物語だ。
ページを開くまで、こんなにも強烈で、
強引に物語の中に引っ張られていくとは思わなかった。
(最後の数ページが気になり、待ちきれず、ガソリンスタンドで給油中に
車内で本を開いたくらいに。そんな本、後にも先にもないと思う。)
過去と現在の物語が巧みに撚(よ)り合わされて、
因果が巧みに交錯し、知りたかった謎の核心へと
怒濤のごとく流れ込んでいく。

なぜ、収容された少年たちが穴を掘らされ続けているのか。
無実の罪のスタンレーの運命はどうなるのか。
名前とは裏腹に、どうしてグリーンレイクは枯れ果てた荒れ地なのか。
冷酷な所長の目的はいったい何なのか。
「K・B」、これはさまざまな謎を解く重要なキーワードなのか。
いやそもそもなぜ、
ひいひいじいさんが呪いをかけられることになったのか。
本当に因果な物語が大胆かつ整然と展開していく。
散らばったパズルが、ちゃんと1枚の絵(ひいひいじいさんから始まる長い長い物語
だから、この場合は絵巻物かも)になるのだ。
私の頭の中で一つに合わさったパズルの絵柄は、
ばかでかくて、大胆な構図で、個性的かつ、結構ワイルドなタッチ。
とにかく、荒唐無稽で、非凡な物語だ。
そして、少年が自分自身に価値を見つけていく成長と冒険の物語。
お待ちかねのカタルシス。

人生にはついていない時もあるけれど、
大事なことは、腐ったり自棄になったりせず、
笑い飛ばすこと。そう、ユーモアこそが、
いつか、道を切り開いていく力の源だ。
これも、イソップ物語よろしく、
私がスタンレーから得た教訓。

いつでも、ユーモアだけは忘れちゃいけない。(シィアル)


「穴 HOLES 」 著者:ルイス・サッカー / 訳:幸田敦子 / 出版社:講談社
※ニューベリー賞、全米図書賞などを受賞

2001年07月03日(火) 『iモード事件』

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