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夢の図書館新館

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-- 2002年05月24日(金) --

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『家なき娘』

☆ハッピーエンドは最高のカタルシス。

『ペリーヌ物語』の大ファンであったにもかかわらず、 『家なき娘』がその原作であったことを知ったのは、 最近のことでした。 『ペリーヌ物語』のVIDEOも全巻持っているのに、 原作を読んだことがないなんて…と、 慌てて、本を注文しました。

現在、『家なき娘』は、 岩波文庫版と偕成社文庫版の2種類があります。 “もう、大人なんだから、岩波文庫本よね。” と、岩波版(訳:津田穣)を買ったのでしたが、 我慢のない私には、とうてい最後まで 読み通すことはできませんでした。 1941年の版のままなのでしょう。 旧仮名遣い・旧字体の嵐で、 物語を楽しむどころではありません。 (これはこれで、味わい深いとも言えるのですが。)

結局、再度、偕成社文庫版を購入しました。 偕成社「文庫」といっても、 文庫本よりは二回りくらい大きめの判です。 子ども向けの本で読みにくいのではと、 心配していたのですが、 挿絵(H・ラノス)も重厚で時代の雰囲気が出ていて、 物語自体も、十分に読み応えがあり、 最初から、こっちにしておけば良かったと思いました。

原作を大人になって読み返してみて、 若干の細部の違いがあるとはいえ、 『ペリーヌ物語』がいかに原作に忠実であったかが よくわかりました。 (ペリーヌの相棒、犬のバロンはアニメのオリジナル。)

インドからフランスへ向かう途中で、 父を亡くし、さらに過酷さを増した旅で 母までを失ってしまう、少女ペリーヌ。 たったひとりで亡き父の故郷へ向い、 けなげに頑張り、生き抜いていく。 唯一の肉親である祖父は、 ペリーヌをあたたかく、迎え入れてくれるのだろうか?

19世紀末、まさに産業革命のさなかに書かれたこの本には、 当時の社会情勢そのままに劣悪な工場労働の一端が描かれ、 また、他方では空想社会主義的な描写もあり、 「時代」が垣間見えるのも、興味深いところです。 (解説でも触れられていますが。) 子ども時代に慣れ親しんだ物語を 大人になって再読することは、 今まで気がつかなかった、 新しい何かを得る、発見するチャンスでもあるのですね。

その他に、『家なき娘』からは、今まで気付かなかった、 いくつかの人生訓を得ることもできました。

・急がず、慎重に、むりをせず、危険をおかさずに行動する賢ささえもっていれば、どんな希望でももてる。

・自分に必要なものを自分でつくりだすことができるのは、なににもまさる才能だ。他人に必要なものをつくりだすことができる才能は、これにまさる。

特に最初の人生訓には、大人ながら、自分の常日頃の行動を振り返り、 全然なってないと、猛烈な反省を促されました(笑)

「艱難辛苦汝を玉にす」 まさに、この家なき娘ペリーヌのためにあるようなことば。 クラシックで、理想主義的な部分も見受けられますが、 少女が数々の困難に見舞われながらも、 決してくじけず、最後には幸福を掴むという、 ハッピーエンドの王道を行くこの物語には、 何にも代え難い、大きなカタルシスがあります。 (シィアル)

追記; 『家なき娘』について、『ペリーヌ物語』やら何やらを調べていて、1939年に作られた日本映画『家なき娘』(監督:伊奈精一 / 脚本:如月敏 )を見つけた。原作は、エクトル・マロウ『家なき児』となっているので、マロの代表作『家なき子』の方が原作なのだろうか。

しかし配役を見ていると、マリ子(美鳩まり)、マリ子の祖父・間宮製紙工場主間宮重蔵(大井正夫)、その甥平川圭一(植村謙二郎)、マリ子の母・田鶴子(高津慶子)、マリ子の父・重吉 (三井章正)、重吉の乳母・お米(浦辺粂子)、職工長( 大内弘)、支配人(鳥橋一平)、角兵衛獅子の親方(生方壮児)ということなので、なんだか、やはり、「家なき娘」のようでもある。

これも、新たな発見の一つに数えてもいいだろうか?
→興味のある方は下記のサイトへ。
http://www.jmdb.ne.jp/1939/bo001530.htm


『家なき娘(上・下)』 著者:エクトール・マロ / 訳:二宮フサ / 出版社:偕成社

2001年05月24日(木) 『自分「プレゼン」術』

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