HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館

夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年05月20日(月) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『異国の花守』

☆年を経る美しさ。

人も、家も、木々も、 年を経たからこそ、内側からにじみ出る 静かできっぱりとした美しさがある。

それはただ、長く年を重ねただけではなく、 長年、丹精されてきたからこそだろう。 しかし、当たり前のように長い時、 そこにあり続けるから、 失ってしまうまで、その大切さ、 かけがえのなさに、 気付くことができなかったりもする。

私にとっては、 たとえばそれは、祖母と過ごした時間であり、 祖母のそれこそ丹精して育てた庭であった。 そのかけがえのなさは子どもなりに 分かっていたつもりだが、 祖母を亡くしてから、積み重ねていく日々の中で ますます、喪失感は募っていく。

失ったものをしみじみと懐かしみ、 失った宝物を心から愛でる気持が、 波津彬子さんの漫画『異国の花守』を 読んでいて湧き上がってきた。 同じような思いを感じたのが、 『西の国の魔女が死んだ』(梨木香歩・新潮文庫) を読んだ時だった。

どうやら、そもそも、 祖母と孫(この本では大伯母と遠縁の娘)が お互いに生き方や在り方に対する思いを ひとつにしていく物語には弱いようである。

椿の精霊が宿る家で椿の花守だという大伯母と 一緒に暮らすことになった雛子。 椿の木が引き合わせた英国人の青年アレックス。 花は咲き、花は散っていく。 時は静かに流れ続け、 椿の精霊が雛子に、伝えようとしていることは・・・。

波津彬子さんの、昔ながらの日本の美への 深い愛情を感じる。 本来、季節の変化は美しく、 瞬間瞬間の、折々の美しさがあるのに、 今は、一年を通じて、コントロールされ、 季節のうつろいも平板である。 『異国の花守』を読みながら、 もっと、もっとちゃんと目を見開き、 耳を澄まして、きちんと季節を感じたいと思った。

ついでながら。 浪漫(ロマンス)愛好家としても、二重丸である。 (シィアル)


『異国の花守』 著者:波津彬子 / 出版社:小学館文庫

>> 前の本蔵書一覧 (TOP Page)次の本 <<


ご感想をどうぞ。



Myエンピツ追加

管理者:お天気猫や
お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]

Copyright (C) otenkinekoya 1998-2006 All rights reserved.