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夢の図書館新館

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-- 2001年10月01日(月) --

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『老人力』

20世紀末を飾る人類の最も偉大なる発見の一つ、 それは「老人力」の発見であろう。 人類のみならず万物全ての発展の果てに必ず出現する 謎の新エネルギー「老人力」、 本書は発見直後世間を震撼させ瞬く間に認知された 「老人力」の最前線での研究報告書として ベストセラーとなった二冊の新書を文庫としてまとめたものである。 ‥‥いや、いつもの赤瀬川さんのエッセイですってば。

「老人力」が流行語として世間を席巻してから数年が経ちました。 当時(1997年)南伸坊さんと藤森昭信さんが このごろ物忘れをするようになった 長老・赤瀬川さんを「ボケた」と言わず 「老人力がついた」と表現する事にしたという話を あちこちで読んで学生時代からの「路上観察学会」ファンの私も なるほど!と大笑いしていたのですが、 それはやっぱり分る人の内輪受けだけで まさかそんな洒落がその後あれほどの社会現象を巻き起こすとは 当の御当人達も読者も思いもよらなかった事でした。

経済成長の坂道を息も付かず駆け上がった末 バブルの崩壊で人生も世の中も永遠に上り調子では 終らないんだと悟った時、 人々は「力を抜く」という事の重要性、というか 嫌が応でも「力が脱ける」という事の意味あい、 言葉を変えると「老い」というものの訪れを 肌で感じ取ったのでありました。 そして一瞬焦ったものの、結局のところ 「老い」「衰え」という事象が恐ろしい事、忌むべき事とされるのは 思い込みの問題なんじゃないか?と言う発想の 「老人力」という言葉の明るい気楽さに光明を得たのです。

しかしそれまで頑張り続けてきた元社会人の多くは このパラダイム・シフトが理解できず 「老人力」を「まだまだ若い者には負けやせん」という 同位相の「老人パワー」と間違えていて それが一層時代の言葉としての流行と混乱に拍車をかけました。 一方、素直に老いを感じている人々、私のような若隠居体質者、 それにおそらく今どきのワカモノのように ぱりぱりに頑張る事に価値を置かない者達には すうっと意味が通り楽しめる言葉だったのです。

世の中のひと休み感覚が終り、そろそろ今度は 「また熱血してみるか!」という雰囲気が戻って来たところに 文明社会は長らく忘れていた感情「恐怖」に張り倒されました。 それに対する反応は武力による「報復」? お待ちなされ、米国、おぬしやはり若いのう。 もっと長い目で見なされ、まだまだ老人力が足りぬわ。 ふぉっふぉっふぉっふぉ、、、、、(ナルシア)


『老人力』 著者:赤瀬川原平 / 出版社:ちくま文庫

2000年10月01日(日) 『クロスファイア』

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