またこの出だしで始まるが、今日、友人のオナカ君がやって来た。 彼は営業職なのだが、暇になるとぼくの店にやってくる。 オナカ君もぼくと同じで、このゴールデンウィークは休みではないらしい。 ということで、今日も暇つぶしか、と思ったが、どうやらそれだけが目的ではなく、次の同級会の打ち合わせも兼ねていたようだ。 前にも話したが、次の同級会は女子が来るのだ。 ぼくが「おい、今度はどこでするんか?」と聞くと、オナカ君は「まだ決めてない」と言う。 シ「そうやのう。人数がまだ定かではないし。この間のところだと手狭だし」 オ「そういうこと」 シ「いっそ、黒崎にカニでも食いに行くか」 オ「カニか」 シ「ああ、そうか。お前カニがだめやったのう」 オ「だめじゃないけどの。ただ剥くのが面倒なだけ」 シ「マルちゃん(同級会のメンバーで、一番大人しい)に剥いてもらえばいいやないか」 オ「剥いてもらうのは悪いけ、マルちゃんが剥いたカニを盗ることにしよう」 シ「同じことやないか」
シ「ところで、この間、解散した後にマルちゃんに捕まってのう。マルちゃん、駅で40分ばかり一人でしゃべりっぱなしやった」 オ「マルちゃんが?」 シ「おう、解散した後、マルちゃんはコンビニでビール買いよったけのう。あれ飲んでからおかしくなった。かなり酔っとったのう」。 オ「そんなに酔っとったんか?」 シ「おう。それで、しまいにはいっしょにタクシーで帰ることになって…」 オ「いっしょにっち、逆方向やろうが」 シ「そう。別々のほうが安いと言うのに、さっち(必ず・やたらという意味の方言)『いっしょに帰る』ち言うけのう」
シ「ところで、女子は誰が来るんかのう?」 オ「マサヨが呼んだだけ来るやろう」 シ「マサヨが何人呼ぶかやのう」 オ「そうやの。でも、もしマサヨが誰も呼べんかったら、マサヨ本人も来んかも知れんぞ」 シ「さすがに一人では来にくいやろのう」 オ「お前、同じ中学の奴がおったやろうが」 シ「おう。2年時は、5人が同じクラスやったのう」 オ「そいつら呼べんとか。Y子とか」 シ「Y子か。結婚して、どこに住んどるかわからん」 オ「実家が近くやろうが。そこで聞いてみたらいいやないか」 シ「ええっ? 前も電話したけのう。お母さんが出たんで、『あのう、Y子さんと、小学校・中学校・高校といっしょだった、しんたと言いますけど、Y子さんいらっしゃいますか?』とか言うたのう。そしたら、『ああ、お名前はうかがってます。せっかくですがY子は結婚しましてねえ…』と言われた」 オ「また言えばいいやないか」 シ「もう、言いたくないわい」 オ「お前なら言えるやろう」 シ「じゃあ、『あのう、Y子さんと、小学校・中学校・高校といっしょだった、しんたと言いますけど、Y子さんいらっしゃいますか?』と、高校の同級生だったオナカ君に言えと言われたんで電話したんですが、Y子さんいらっしゃいますか?と言うてみろうか?」 オ「おれの名前を出すな」
シ「そういえば、お前、今体重何キロあるんか?」 オ「最近量ってないけど、90キロはあるんやないか」 シ「ものは相談やけど、今度の飲み会に高校の制服着てこんか?」 オ「誰が着てくるか。おれあの頃、体重は62キロやったんぞ」 シ「おれも、そのくらいやったのう。いいやないか、おれも着て来るけ」 オ「お前、今何キロあるんか」 シ「74キロたい」 オ「お前は12キロですむやろうけど、おれは28キロ減らさないけんやないか」 シ「出来るやろ」 オ「出来るわけないやないか」 シ「出来んかのう?」 オ「当たり前やないか」 シ「じゃあ、一年後に着てくることしようか」 オ「いやっちゃ」 シ「いいアイデアやったのにのう」 オ「お前だけ着てくればいいやないか」 シ「お前は、友だちがいのないやつやのう」 オ「勘弁してくれ」
ということで、話し合いは終わった。 が、何一つ決まらないままだった。
|