2,3日前から左目に違和感があった。 最初は目の中がコロコロとして気持ち悪かったのだが、ゴミか何かが入ったのだろうと思い、あまり気にはしなかった。 それからしばらくして、目を閉じた時、まぶたに熱を感じるようになった。 しかし、この時も「よくあること」と思って気にはしなかった。 ところが、それ以降、ちょくちょく目やにが出るようになった。 目薬を注すようになったのは、その時からだ。
そして今日。 朝起きると、上まぶたが重く感じる。 どうしたんだろうと鏡を見てみると、何と、上まぶたが赤く腫れ上がっているではないか。 見えにくいなどとことはないのだが、その部分が気になってしかたがない。 そこで、目薬を注した後に、まぶたを氷で冷やすことにした。 とは言え、今日は仕事だったので、家でゆっくり冷やすというわけにはいかない。 通勤途中、信号待ちの合間を利用して、氷をまぶたに当てていたのだ。 だが、腫れは引かなかった。
会社に着いてから、さっそく目薬を注そうとポケットを探ってみると、入ってない。 氷に気を取られて、家に忘れてきたのだ。 しかたなく、薬局に新しい目薬を買いに行った。 薬局に行くと、H先生はまだ来てなかった。 が、パートさんが来ていたので、その人に見てもらうことにした。 「すいません」 「あ、おはようございます。どうしたんですか?」 「目がちょっとねえ」 「目‥‥?あっ、ホントだ。二重が大きくなってますよ(笑)」 「そうやろ。これにいい目薬ある?」 パートさんは「まぶたの腫れだから、これですね」と、抗菌目薬を取り出した。 「じゃあ、それにする」と言った時、ふと『目薬だけじゃ、心許ないなあ』という思いがよぎった。 『心許ないか‥‥。そうだ、眼帯だ!』 ということで、眼帯もいっしょに買うことにした。
買ったばかりの目薬と眼帯を持って、ぼくは休憩室に行った。 そして、眼帯についていた消毒用のガーゼで目の周りを拭き、目薬を注した。 いよいよ眼帯の装着である。 ぼくは生まれてこの方、眼帯をつけたことがなく、今日が初めての体験だった。 ガーゼを目に当て、眼帯を装着した。 ひもの長さを調整して、さあ出来上がりだ。 たかが眼帯であるが、何せ初めてのことなので、妙に嬉しい気がする。 ところが、すべての作業が終わり、立ち上がった時だった。 その嬉しい気持ちが、一度に吹き飛んでしまったのだ。
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