ミルキーというあだ名の子がいた。 彼女とは保育園時代から中学校まで、ずっといっしょだった。 10年ほど前に、中学時代の同窓会をしたことがある。 その時もぼくは彼女のことを、『ミルキー』と呼んでいた。 ところが、彼女はそのあだ名がずっと嫌いだったらしく、「しんた君、もう『ミルキー』と呼ぶのやめてくれん?」と言った。 しかし、ぼくは彼女のことを『ミルキー』以外に呼ぶことが出来ないのだ。 結婚して変った名字で呼んでも、名前で呼んでもピンと来ない。 やはり、『ミルキー』と呼んだほうがしっくりくる。 そう、彼女はぼくから『ミルキー』と呼ばれる宿命にあったわけだ。
彼女は遠い地に嫁に行っているため、もしかしたら、今後彼女と会うことはないかも知れない。 しかし、会っうことがあったとしたら、やはりぼくは『ミルキー』と呼ぶだろう。 たとえその時が、80代であっても、90代であっても。
【おまけ】 あるパートさんが「さっきお年寄りの後ろを歩いていたら、一発かまされたんですよ」と言った。 「かまされた…。もしかしておならか?」 「ええ。私、そういうことがよくあるんですよ。それも決まって臭いやつを」 「ははは」 「笑い事じゃないですよ」 「でも、あんたは今後もずっと、年寄の後ろを歩くと一発かまされるやろうね」 「どうしてですか?」 「それがあんたの宿命やけよ」 「それって、私がそういう星の下に生まれたということですか」 「そう」 かわいそうだが、彼女は一生、年寄の臭い屁から逃れられないだろう。
(宿命編 おわり)
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