Lacrimosa 日々思いを綴る
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| 2005年01月21日(金) |
かいつまんで書く小説(構想中) |
集落の北方、そびえ立つ岩山の麓に広がる原生林。 分け入ってから、すでに半日が経過しようとしていた。日が傾き始めたせいだろうか。行く道が少しずつ薄暗くなって行く。 バベル族長と、彼に付き従うナーシャとガドルは、無言のまま歩を進める。枝葉が行く手を遮ろうとも、意に介さぬ様子だった。 5ヤードほどの距離で、エルグレンが続く。ティム、エリオス、レミネスの3人が彼のすぐ後ろに付き、最後尾にはラクリモーザが立つ。後方からの不意な襲撃があったとしても、彼なら対処できる。 退屈とも言えるこの状況に、いつもなら軽口を叩きながら歩くティムだが、今は一言も発しない。 急に視界が開けた。周囲を背の高い木々に囲まれたその一帯だけ、所々に背の低い草が生えているだけだ。そこにあったのは、環状に並べられた16本の石柱。 1本1本の石柱には、古代語と思しき文字が刻まれている。最も大きな石柱には、ローブを身に纏いし者のレリーフが彫り込まれていた。 「こいつは…?」 最初に言葉を発したのは、エルグレンだった。その高さは、10フィートといったところか。 「我が先代が描いたゾルバ様の御姿だ」 バベルが答えた。環状列石の中央に進み、荷物を肩から下ろし、儀式の準備を整えようとしている。 冥府の支配者ゾルバ。かつてこの世が未曾有の危機に瀕した時、冥府より出でて英雄達に助力した、という伝説が残っている。 ディガンによって世界は混迷の時を迎え、今再びゾルバの助力を得んとしている。 石の環の中央に、同じ大きさの2本の石柱が立っている。ゾルバのレリーフは、その2本の間の先にある。それはまるで門柱のようであった。 バベル達3人のダークエルフにより、儀式の準備は着々と進んでいる。 細やかな装飾の施された杖が、門柱のそばに突き立てられた。 磨き上げられた玉石を袋から取り出し、並べてゆく。それは、門柱からレリーフに向かって、道を作るように並べられた。 「これは…ここから、ゾルバのいる場所へ行けるの?」 無言で準備を進めるバベルに、ティムが問いかけた。 ディガンの率いる大軍勢に打撃を与える事が出来れば、ドラゴンアイズやルセボールへの脅威を振り払う事が出来るだけでなく、こちらからディガンの拠点へ攻め入る事も可能となる。そのためには、ゾルバの元へ赴き、禁忌魔法フラミス・アクリブスを拝領せねばならない。そして、禁呪を扱うに足る魔力と資質を備えたのは、ティムだけだ。魔法の使用者が自ら冥府へ赴き、ゾルバに謁見せねばならないのだ。 使い込まれた小振りの香炉に、火が入った。準備が整ったようだ。 「これより、ゾルバ様の御座へ続く道を開く。ティムとやら、準備は良いか?」 門柱のそばから、バベルが呼び掛けた。ティムは気だるそうに髪をかき上げて一つ息をつき、門柱に歩み寄る。 「こういう場合、お気をつけてと言うべきなのでしょうか」 蓄えた髭をなでながら、レミネスが独り言のように言った。 「ま、なるようになるわよ」 やる気のなさそうな言葉。しかし、そう言って軽く振り返った彼女の顔は、いつになく真剣なものだった。 「…ああ、わかっている」 ラクリモーザが独り呟いた。視線は今まで歩いてきた道の方へ向いている。 風を切る音が耳に届く前に、ラクリモーザは懐の小太刀を抜き払っていた。 「エルグレン、エリオス、構えろ!」 言いながら、ラクリモーザは左に飛び退いた。5本の矢が地面に突き刺さる。 エルグレンとエリオスは武器を手に、ティムとバベル達をかばう位置に立った。レミネスは体の正面に杖を掲げ、早口で詠唱を始めた。 小太刀を構えながら、ラクリモーザは森へ視線を向ける。 「どうやら我々をつけて来たようだな」 声は、ラクリモーザが手にしている小太刀から発せられた。魔法によって知性を与えられた武器は、入手こそ困難だが、そう珍しいものではない。 再び空気を裂く音。今度は矢ではない。ナイフだ。音を立てず、短時間で一気に距離をつめたらしい。今度の狙いはティムだ。 門柱のそばで、大気がうなりを上げた。凶刃は、レミネスが生み出した大気の障壁に阻まれた。 音一つ立てずに、7つの影が躍り出た。全身は濃緑の装束で包まれている。
あー今日はここまで(おい)
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