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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■資本主義者のLD/LF騒動に対する違和感
僕は、自分を「資本主義者」だと称している。
資本主義者である僕は、LD/LF騒動には強い違和感を感じる。
放送メディアとインターネットの融合に関しては、全くといっていいほど議論されていないし、僕自身も「今回の件では」ネタにする価値すら感じないので、無視する。

僕が違和感を感じるのは、「株主価値に対する短絡的な議論」と「資本主義じゃなくて資産主義か?」の二点である。


・「株主価値に対する短絡的な議論」について

LD/LF騒動で、今更ながら「株主価値」および「会社は誰の物か?」についてマスメディア等で陳腐な論議が繰り返されている。
言うまでもなく株式会社は株主のものであり、株式会社は株主への貢献が最優先される。
株式会社では、経営者も株主の委任を受けて経営を行っているのであり、経営者のものではない。
それは、ルールであり、議論の余地はない。
だが、今回の騒動では、株式会社のシステムが企業支配(ガバナンスというよりも支配)の観点に偏って論じられているように思う。

本来、企業が追求すべき、株主の利益、株主への貢献とは、何か?
ひとつは、「永続的な」株価の向上であり、もうひとつは配当である。
このあたりの議論については、僕が過去に書いており、当時と考え方に変化はないので、そちらを参照していただきたい(下記リンク参照。先に読んでおいてもらえるとうれしいです)。

株式会社にとってのステークホルダーは下記のようになる。

@顧客
A取引先
B従業員
C銀行
D政府
E株主

この順序は、P/Lに記載される順序である。
P/Lに沿った形で言い換えよう。

@売上(顧客への商品・サービスの提供)
A原材料コスト(取引先への支払い)
B製造販売費用(従業員への給与支払い)
C借金返済、金利支払い(銀行への支払い)
D税金(政府や社会への支払い)
E内部留保(成長のための再投資用)
F配当(株主への支払い)

P/Lにのっとった上記の順序によると、富の分配では株主が一番最後となる。
企業は売り上げに対し、最後の絞りかすを株主に配当するのである。
すなわち、株主を重視する、ということは、その他のステークホルダーである顧客、取引先、従業員等を重視したあとの最終結果である、ということである。
顧客、取引先、従業員が生産活動を行うからこそ、企業は収益を上げることができる。
企業が株主に報いるためには、顧客、従業員、取引先が製品やサービス、財を生産し、収益を上げなくてはならない。
P/L上で株主より上位にステークホルダーを重視しているからこそ、株主への貢献が果たせるのである。

だが、今回のLD/LF騒動では株主利益、と主張しながら顧客、取引先、従業員は無視されている。
これは、資本主義者の僕にとっては、矛盾に見える。
企業支配だけの議論でしかないように見えてしまう。
LDがLFおよびCXを支配したところで、うまくいかない。
取締役会を牛耳っても、顧客、取引先、従業員を無視して株主利益だけを生み出すことはできない。
僕には、株主価値を毀損することになる、としか思えない。
敵対的買収が難しいのは、これらのステークホルダーを納得させられない場合が多いからである。


・「資本主義じゃなくて資産主義か?」について

LD/LF騒動では、やたらと「資産」の話が出てくる。
C/F、P/L、B/Sのうち、B/S(資産)に関連する話題ばかりをしているように思える。
僕がアニュアルレポートを読む際に重視する順序は、C/F、P/L、B/Sの順である。
LFもCXもサービス業である。
サービス業にとって、B/Sは大きな意味を持たない。
資産、PBRベースの企業価値の評価は重要ではない。
B/Sをベースにした企業価値が重視されるのは、重厚長大型産業、設備投資型産業、インフラ産業などである。
今回は資産としては持ち株が話題の中心なので、少しニュアンスが異なるけれど、サービス業にとって、資産は多くても本業にはあまり関係しない。
僕は、資産ではなく収益で、PBRではなくPERで、語ってほしいと思う。

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03月17日(木)
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