ID:99799
斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
[1220771hit]
■テクノロジーにおける「法則」とノンリニアな変化
テクノロジーの将来予測には、「ムーアの法則」、「ギルダーの法則」、「メトカーフの法則」がよく引用される。
■ムーアの法則
ゴードンムーアによる「CPUの性能(集積度)は1年半ごとに2倍になる」という法則。
■ギルダーの法則
ジョージ・ギルダーによる「ネットワークの速度は、半年で2倍、9ヶ月で2倍、1年で10倍、10年で1000倍くらい」になり、「プロセッサの進化の速度よりも、いずれはネットワークの速度の方が上回る」という法則。
■メトカーフの法則
Ethernetの発明者、ボブ・メトカーフの「ネットワークの価値は、ユーザ数の二乗に比例する」という法則。いわゆるネットワーク効果
いずれも単純な法則だけど、あながち間違ってもいない。
そして、これらの法則は、「経験曲線」によって実証可能である。
経験曲線とは、「累積生産量と単位コストの関係を表した曲線で、累積生産量が増加すると単位コストが減少する経験法則をグラフ化したもの」である。
過去の統計値を経験曲線上にマップすることにより、定量的な将来予測が可能になる。
また、経験曲線は「曲線」なのだけれど、横軸を対数軸にすれば、直線で表現することができる。
対数軸を用いることにより、将来予測は更に容易になる。
ただし、経験曲線は、単純な製造業における将来のコスト予測のために作られたものなので、技術革新の多いテクノロジー関連の将来像を描くには、少々無理がある。
だが、単純に「将来のHDDはいつ、どの程度の容量になり、コストはどの程度になるのか?」、「ネットワークのコストと通信速度はどうなるのか?」といった単純な予測であれば応用可能である。
将来予測を行うとき、この経験曲線のような単純なモデルをベースとして使用するのだけれど、当然ながらそれだけでは不十分。
経験曲線はあくまでも、時間とともに経験値が上がり、それに伴ってコストが下がる、という「リニア」な発想からきている。
だが、現在、僕たちが直面しているのは単純なリニアな変化ではない。
テクノロジーの常識が根底から覆されるような変革の時代だ。
これまでのテクノロジーのリニアな変化の延長線上で将来像を語ることが困難な時代が到来した。
僕は、変革には3つのスタイルがあるように思う。
@経験曲線的にリニアに変化するもの
通信速度の向上、HDDの容量憎、CPUの速度向上、各種テクノロジーのコスト低下、インフラの普及率等
Aリニアな変化の延長線上で生じた革新
通信速度、HDDの容量増による放送形態、視聴スタイルの変化
B従来とは異なるノンリニアに生じる革新
RFIDタグ、センサーネットワーク、ナノテクノロジーによる「アトムとビット」の融合
これらの3つの変革はそれぞれが個別に生じるのではなく、組み合わさった形で表出する。
特に現在は、ノンリニアな変化の兆しが見られる。
そうしたノンリニアな変化は、予測が難しい。
既にテクノロジーが存在するのであれば、そのテクノロジーがどの程度の速度で進化するか、どの程度ユーザーに受け入れられるのかについて検討を行えば良い。
ユーザーが受け入れるかどうかのパラメーターは、コスト、利便性、普及率、マーケティング等、不可視な要素も多いけれど、シミュレーションやシナリオプランニング、ゲーム理論の応用により、ある程度予測がつく。
だが、まだ芽もないテクノロジーによるノンリニアな変化を見つけ出すことは難しい。
今、起ころうとしている変革はこのノンリニアな変化である。
モノにRFIDタグがつき、センサーネットワークが張り巡らされた世界。
センサー情報のようなダイナミック情報と個人情報や履歴情報のようなスタティックな情報が結びついたとき、そこには新たなコンテキストが生まれる。
僕という特定のスタティック情報を持った個人が、ある状態、ダイナミックな状態にいる。
「僕というスタティックな情報とダイナミックな情報の複合体」は、同じくスタティック情報とダイナミック情報の複合体である世界と接点を持つことにより、何らかのコンテキストが生じる。
そのコンテキストを適切にマネージすることにより、あらたな世界が生じる。
[5]続きを読む
10月18日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る