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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■「阪神優勝1133億円の経済効果」の計算ロジック
阪神タイガースが優勝したら、1133億円の経済効果があるのだそうだ。
この手の経済波及効果の推定は、ワールドカップなどの大きなイベントの開催時やテーマパークや公共施設がオープンした場合などによく見かける。
経済波及効果の分析は一種のお遊びに近いのだけれど、計算手法は確立されている。
市場規模や経済波及効果の推定は若手コンサルタントやコンサルタント志望の学生が基礎スキルを磨くには良いネタでもある。
日経の記事に書いてある内容を整理しなおしてみた。
■経済波及効果:1133億円
・688億円の需要が喚起され、他産業への波及効果も含めると1000億円を超える経済波及効果
■効果の内容:
・球場・球団関連の売り上げ増:年間32億円
(一試合当たりの平均入場者数:約6800人増)
・飲食店の売り上げ:254億円増加
(推定約146万人の成人ファンの気持ちが明るくなり、成人ファンの半数が月に一回、5000円程度の飲食費増)
・企画商品や関連雑誌の販売は128億円
・スポーツ紙の売り上げが25億円
・百貨店の収入が250億円増
経済波及効果の求め方の基本的な考え方は単純である。
@直接的に効果が出そうな要素を洗い出す
A関連して効果の出そうな要素を洗い出す
Bそれぞれの要素に前提を置いて推計する
B効果の出る産業の関連産業への波及効果を求める
今回の例をもとにすると、@の直接的な効果とは球場・球団関連の売り上げ増である。
Aの関連した効果とは飲食店の売り上げ増、スポーツ誌の売り上げ増、百貨店の優勝セールの売り上げ増など。
効果の規模推定の前提条件の置き方は「推定約146万人の成人ファンの気持ちが明るくなり、成人ファンの半数が月に一回、5000円程度の飲食費増」と、いうように内容を見てわかるとおり、かなりいい加減である。
適当に前提を置いてしまえば良い。
そして、最後は関連する産業への波及効果。
関連する産業への波及については、「産業連関表」を使用する。
産業連関表とはレオンチェフというノーベル経済学賞を受賞した経済学者が考案したありがたい表である。
この表は「風が吹けば桶屋が儲かる」的な発想を数値モデルに落としてある。
例えば、クルマが1台売れたとしたら、クルマの製造だけを取ってみても、鉄鋼業界や電子業界やゴム業界のようにクルマの部品を構成する業界に影響があるハズである。
さらにはその先の業界にも連関した影響を及ぼす。
各産業とその関連業界への影響度合いを表にしてあるのが産業連関表。
お役所のサイトに行けばダウンロードできる。
想定可能な経済効果を算出し、そのうえに産業連関表を用いて、最終的な経済波及効果を求める。
今回の阪神優勝の例で見れば、「688億円の需要」を産業連関表に当てはめて、計算して、「1133億円の経済効果」と、しているのだと想定できる。
ま、ただのお遊びですね。
阪神が優勝したら、コンサルティングファームの入社試験のケーススタディーには、このネタが多く使われるのだろうな。
■阪神優勝なら1133億円の経済効果・日本総研
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20030612AT1D1209012062003.html
■情報通信産業連関表
http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/h12_kanren/h12_kanren.html
06月12日(木)
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