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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■コンサルティングファームの謎 H報告書1ページあたり100万円は本当なのか?
都市伝説として、戦略コンサルタントの報告書は1ページあたり100万円以上する、といわれている。
それは本当なのか?
はい、本当です。
僕らがコンサルティングの結果を報告書にまとめるときには、本編とエグゼクティブサマリーの両方を用意する。
本編はクライアントの担当者向け、エグゼクティブサマリーはその名の通り、社長および役員向けの資料である。
本編は結構な量があったりもするのだけれど、エグゼクティブサマリーはせいぜい30枚程度のパワーポイントである。
都市伝説で言われるところの、「戦略コンサルタントは30枚ほどの簡単な報告書で数千万円を請求する」は、このエグゼクティブサマリーを指している。
エグゼクティブサマリーだけ見れば、確かに1ページあたり100万円のドキュメントかもしれない。
エグゼクティブサマリーを作っている時の僕の発言。
「難しい言葉使っちゃ駄目じゃん。もっとバカでもガキでもわかるような言葉に直して」
「ここの漢字はひらかなにして。カタカナ、漢字は最小限」
「もっと、字を大きくしてよ」
「文字が多すぎ、一言で短く明快に表現して」
「もっと枚数を減らせない?」
「絵をたくさん入れてマンガっぽくして」
「かわいい色を使ってよ」
「数字はポイントだけ、どどーんとでかく」
「ページはすかすかにして、詰め込んじゃ駄目」
「基本はどんな大バカが見ても3秒でわかるように、だからね」
このような指示をすれば、当然、誰にでも理解できる難しいことを全く言っていないシンプルでファンシーな資料ができあがる。
もちろんこれは、エグゼクティブは忙しいので、短時間で要点を正確に理解できるように、という狙いなのけれど。
でも「大バカでもわかるように」を本気で言っている場合もある。
欧米企業のエグゼクティブは経営のプロなのだけれど、日本企業のエグゼクティブは従業員のアガリポジションなので、専門的な経営用語はわからない人が多い。
財務諸表すらロクに読めないような役員も多い。
日本企業のエグゼクティブは専門的な経営のスキルや知識がなくても務まる。
よって、ややこしい専門用語など、もっての他である。
偉い人(予算を持っている人)に恥をかかせてはならない。
エグゼクティブサマリーは、「バカでも3秒でわかるように」作ってあるので、結果的にお勉強好きの人が見ると、どうしてこんなものが数千万もするのか、という気がするのだろう。
エグゼクティブサマリーは確かに30枚なのだけれど、そのエグゼクティブサマリーの裏にはダンボール数箱分のドキュメントが隠れている。
簡単なグラフに見えても、数千行のEXCELの式が隠れていたり、一言のコメントが何十件ものインタビューのなかからの一言だったり。
とんでもなく難しいことや、ややこしいことを、アホでもわかるように示すのがコンサルタントの役目なのだ。
戦略コンサルタントは、お勉強資料や学術論文を作るのが仕事ではない。
経営者の判断材料を提供する事が仕事なのだ。
戦略コンサルタントが作ったエグゼクティブサマリーを目にする機会があったら、真似して同じようなものを作ってみるといい。
絶対、同じようには作れないよ。
もし、戦略コンサルタントの報告書を見て、このくらい自分でも作れる、と思ったら、同じようなものを作ってみる事をおすすめする。
外見は似たようなものが出来上がると思うけれど、クオリティーは全然違うはず。
本当に同じクオリティーのものが一般企業の社員が作れてしまったら、僕らはプロとしてメシが食えない。
でも、真似してみればいろんな発見があると思う。
03月19日(水)
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