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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■Digital Decade
僕はコンサルタントになってからの約3年間のうち、ほとんどの時間を通信・ハイテク業界の数年先のビジネス戦略作りに費やしてきた。
2010年のビジネス。
僕はこれからの10年の世界の変革はテクノロジーによってもたらされると信じている。
ユーザーの嗜好の変化だとか、世界経済の変化だとか、少子化や高齢化だとか、もちろんそういった要素を無視することはできないけれど、最も大きな変革要素はテクノロジーだ。
未来を読み解くうえで、時代の変化の変数を要素分解していく際も、ルートにテクノロジーを据えると最も的確な結果が得られる。
テクノロジーが進化し、それに伴ってビジネスが変化し、ライフスタイルが変わっていく。

将来を見通す上で、消費者のライフスタイル、嗜好、ニーズの変化を軸に据えることは危険だ。
うつろいがちな消費者の動向は、どうにでも変化する可能性があり、予測不可能。
確実に変化しないものを軸に据えなければ、将来の予測、ビジネス戦略の策定はできない。
確実に進化する唯一のものがテクノロジーなのだ。
テクノロジーは、ユーザーニーズの影響をうけつつも、確実に進化していく。
ムーアの法則に見られるように、そこは不動の要素が大きい。

今の時代は、消費者のニーズの変化→ビジネスの変化→新テクノロジーの開発、といった順序での変化はあまり見られない。
僕達のクライアント企業は「ユーザードリブン」とか「顧客ニーズの理解」という言葉を連発して、「プロダクトアウト」を嫌う。
世の中的には顧客第一、が一応言葉のうえでは浸透している。
でもね、それは今、現在のビジネスをどうしようか、と検討しているときのお話。
将来のまだ芽さえも生まれていないような、製品、サービスについて考える場合には、現在のユーザーのニーズはほとんど当てにならない。

数年先のビジネスに対しての消費者のニーズを統計数値から読み解くことなど不可能。
同様に消費者アンケートも役に立たない。
「2010年頃にこのような製品を発売する予定です。どのような機能が欲しいですか?いくらだったら買いますか?どのように利用しますか?」
聞くだけ無駄だ。
未来について考えるときに消費者の意見など、聞くことにあまり意味はない。
消費者は、商品やサービスを与えられて初めて評価するのだ。
消費統計資料を無視するわけではないけれど、将来を見通すうえでは、統計資料は単に過去の話に過ぎないことが多い。
ただ、消費行動は突然変化するわけではなく、ある程度の時間をかけて変化していくので、消費者が新しいテクノロジーや商品を受け入れるのに、どの程度の抵抗があるかを見る事はできる。

テクノロジードリブンな未来を読み解くうえで必要なのは「プロダクトアウト的発想」。
そして、そのプロダクトをベースにユーザーや社会がどのように変化していくかのシナリオを描き、繰り返し、シミュレーションする。

一方で、テクノロジストは概してビジネスやマーケティングに弱い。
自分達の持つテクノロジーに対しては絶対の自信を持っていても、それがどのようなビジネスモデルで販売されるのか、消費者にどのような影響をもたらすのかを正確に認識してはいない。
儲かるはずだ、という根拠のない信念をもっていても、どのように儲かるのか、儲けるためのビジネスモデルは何か。
そういったことをエンジニア達は恐ろしいほど理解していない。

素晴らしいテクノロジーであっても、ビジネス展開を誤ったがために、競争に負けていくもの、消えていくもの、が後を絶たない。
この世の中は「いいものは必ず売れる」ような甘い世界ではない。
同じ「いいもの」であっても、売り方やパッケージングによって、いかようにも価値は変動する。
素材としていいテクノロジーであっても、製品としていいものになるとは限らないし、マーケティングや流通で失敗する例も多い。

テクノロジーとビジネスをきちんと結びつけて、考えられる企業は非常に少ない。
テクノロジーがビジネスを、経済を、世界のルールをどのように変えていくかを認識している人間は更に少ない。


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03月01日(土)
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