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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■携帯電話デザインの醜さとバリューチェーン
日本の携帯電話は機能的には圧倒的に優れているけれど、デザインは格好悪い。
海外の携帯電話はデザインは格好いいけれど、機能的には日本の携帯電話の数世代前と変わらない。
これは日本と海外の携帯電話のビジネス構造の違いに起因している。
日本の携帯電話ビジネスは垂直統合モデルである。
バリューチェーンが垂直統合されている。
それに対して海外の携帯電話ビジネスではバリューチェーンはフラグメントしている。
日本の携帯電話会社はインフラからプロバイダ機能,コンテンツ(正確には課金機能)、端末までの携帯電話ビジネスの全てのバリューチェーンを支配している。
バリューチェーンが垂直統合されていのだ。
端末は各メーカーが自由に作っているように見えるが、実際は異なる。
携帯電話事業者がメーカーに基本仕様を提示してメーカーに製造をしてもらい、携帯電話事業者が買い取って販売するようになっている。
携帯電話端末に携帯電話事業者のロゴは入っていてもメーカーのロゴが入っていないのはそのせいだ。
それに対して海外の携帯電話ビジネスは垂直統合されていない。
携帯電話会社はあくまでもインフラの提供、端末メーカーはあくまでも端末の提供、とバリューチェーンのおのおのの領域が分断されているのだ。
理由はSIMカードによる。
SIMカードとは携帯電話の番号部分の情報が記録されているICカードである。
SIMカードにより、利用者は携帯電話を買い換えても、SIMカードだけ差し替えれ利用可能になる。
買い替えが自由なのだ。
基本的に端末は買取モデルなので、日本でいうところの機種変更という概念がない。
SIMカードは日本ではFOMAカードのイメージに近い。
ただし、FOMAカードは他事業者との互換性はない。
日本の携帯電話事業者によってインフラの互換性がないので、自由に端末を乗り換えることはできないので、ビジネスモデル上はSIMカードとは異なる。
一方で、FOMAカードは端末の買取モデルおよび、複数端末の使い分けには寄与する。
日本の携帯電話事業者はバリューチェーンの全てを自分で押さえているので、技術的には自由な展開が可能。
全てを自社内のみで決定可能で、他社との調整を必要としないので、どんどんと新しい技術を取り入れることが可能なのだ。
日本の携帯電話事業者が異常なスピードで新しいサービスを展開可能なのはバリューチェーンの全てを押さえていることによる。
かつてMacintoshがWindowsよりも優れていたのと同じ理由だ。
Macintoshはハードウエア、OSの両方をAppleのみが供給している。
Appleはハードウエア、OSを自社内で開発していたため、Windowsよりも速い速度での進化をすることができていたのだ。
WindowsはCPUはインテル、ハードウエア製品は各メーカー、OSはマイクロソフトとビジネスモデルは垂直統合されていない。
バリューチェーンの特定領域の水平統合は起きているのだけれど。
コンピュータ業界のバリューチェーンに関しては長くなるのでこれ以上は触れない。
日本の携帯電話のインフラ、サービスは異常な進化を続ける一方、端末製造メーカーとしては技術の進化が早すぎるため、最新機能を盛り込みすぎた携帯電話端末を動かすことが精一杯の状態が続いている。
端末のバグによる無料で機種交換を行うようなトラブルが続いている。
まだまだ日本の携帯電話ハードウエアは成熟しておらず、進化の途上なのだ。
ユーザーの要望としてデザインは重要な要素ではあるが、まだデザインを洗練させるだけの余裕がない。
背面液晶がついたり、カメラがついたりすることにより、デザインコンポーネントそのものが変わってしまうのだ。
しかも、半年に1回はモデルチェンジする。
とてもデザインを成熟させるような余裕はない。
日本でもたまにデザインの優れた携帯電話端末が存在するが、機能面を見ると1世代前のものだったりする。
それに対して海外の端末は進化の速度が遅い。
低いレベルである程度、技術が成熟してしまっているのだ。
バリューチェーンがフラグメントしているため、新しい技術やサービスを迅速に提供することができないのだ。
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11月09日(土)
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