ID:98098
Lyrical-mode
by しゅーこ
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■フルコンプ
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「先輩」
「譲くん」
「一緒に帰りませんか?」
「ごめん!ちょっと急いでるんだ。ごめんね?」
机の中の教科書をバッグに詰め込むと、教室を飛び出す。
わざわざ迎えに来てくれた譲君には悪いけれど。
『廊下を走るな!』すれ違った先生から注意を受ける。
「ごめんなさい!」
走るのはやめたけれど、おかしいくらい早足であるく私。
昇降口では靴を履く時間ももどかしい。
だって、早くいかないとあのひとは…。
楠の幹に凭れて彼は立っていた。
腕組みをして目を閉じている。
声をかけようとして思わず見とれている私。
なんて綺麗な人なんだろう。鎧姿も、片肌を脱いだ狩衣姿も美しかったけれど、シンプルなシャツと長い脚を覆うパンツが彼の鍛えられた肉体を際立たせている。
銀糸の髪に紅が似合う。
そんな彼が周囲の目を惹き付けないはずはなく、ほら、彼の傍には幾人もの綺麗なお姉さんたちが自信ありげで魅惑的な微笑を浮かべて彼を見つめてる。
その誘惑の眼差しは女の私もドキっとするほど艶やかで。
彼は時折眼を開いては気まぐれに彼女たちの話を聞いているようだ。
やがて、ひとりの女(ひと)が彼の首に腕を廻した。
私の胸がきゅっと痛む。
グロスで輝く唇で 彼に一言二言何かを話す彼女。
こういうとき女性を振り払ったりは・・しないんだろうなぁ。
お貴族サマだし。
あっちにいたときも相当遊んでたっぽいもの。
気まぐれで残酷で・・・でも美しいひと
ふいに彼の眼がまっすぐ前を捉える。
気だるそうにその唇が動き、さっと顔色を変えた彼女が恐れを抱くように腕を解きばたばたと走り去った。
周りのひとたちも後ずさる。
やがて、彼は意地悪な微笑を浮かべた。
「来いよ」
その眼は私にまっすぐに向けられていて。
「出かけたいというから来てやったのに、待ちぼうけとはつれないことだ」
やっぱり気だるげに貴方は幹に預けていた身を起こした。
「ご、ごめんなさい。急いだんですけど、HRが長引いちゃって」
「急いているふうには見えなかったが?」
ってことは私がここでずっと見ていたこと、気づいてたのね。
「いつから?知らん顔してたくせに」
「楽しいのかと思ってな」
「楽しいのは知盛でしょ。綺麗なお姉さんたちに囲まれちゃって」
「俺は何もしていない。女が勝手に寄ってきただけだ」
ええ、ええ、そうでしょうとも。
誰だってあなたに魅せられずにはいられない。
綺麗で、格好良くて、優雅。退廃的でさえあるのに内には荒ぶる魂を秘めていて…
私なんか剣の腕がなかったら一生振り向いてもらえなかったかもしれない(ってか確実にそう)
私のネガティブな考えを見透かすように にやりと貴方は笑う。
「べ、べつに!妬いてなんかないからねっ」
顔がかっと熱くなる。ってか、これじゃ妬いてるって自分から申告してるようなものだ。私のバカ。
「くっ。相変わらず物分りの悪い神子殿だ。毎日あれほど教えてやっているというのに」
きゃ〜〜!!さらっとなんてこというの、この男は!
火照る頬を隠そうと顔を覆う私が面白いのか知盛はまたくっくっと笑う。
からかわれてる。完全にからかわれてる。
「ん、もう!」
「で、どうするんだ?おまえの買い物に付き合えばいいのか?それとも…」
意味ありげな視線に胸がとくんと高鳴る。
「…おや、神子殿は我が腕に抱かれることをお望みか?」
「ち、違う!」
違わないけど違う…ってあれ、私は何を考えて…
落ち着け、落ち着け私!完全に遊ばれてるぞ。
「そうだな。密事は夜がいい」
「だーかーらー」
「行かないのか?」
「もう…。(はぁ)行く!」
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09月29日(木)
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