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いぬぶし秀一の激辛活動日誌
by いぬぶし秀一
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■自立支援施設で本当に自立できるのか?ある事例から
 私は、区議会議員時代から「過ぎたる福祉は、人の生きる心(炎)に水をかける」ようなものだ、と指摘をしてきた。これに対し、共産党などからは「弱いものいじめだ」、「憲法25条に定められた権利だ」などと反発を頂戴していた。

 身体に障害のある方、高齢の方など、保護が必要な方には、いま以上の福祉政策を、働ける人々には、段階的に福祉内容を減らし、自立を促進する「めりはりのある福祉」を、と訴えたつもりだ。

 例えば、母子家庭、小学生2人の場合の生活保護費は、概ね23万円余りである。さらには、医療費がタダ、、修学旅行もタダ等、現物給付も別にある。はたして、パートで23万もらえる仕事があるだろうか。

 独居老人で、生活保護費をもらうと、月額16万円余り。まじめに国民年金を40年払った独居老人は月額5万円あまりの給付。なにか、おかしくはないだろうか。

 先日、50歳代の一人暮らしのAさんが7年間勤めた会社をやめた。それは、ある日の無断欠勤が原因だった。いままでなかったことなので、心配になった会社の人が、彼の都営住宅に様子を見に行った。

 応答はないが、室内に人の気配はする。近所の交番の警察官、都営住宅の管理者などを呼び、なかにいるAさんを外に連れ出した。よろよろしているので、警察官が救急車を呼んだが、Aさんは救急搬送を拒否。

 室内は、缶ビールと焼酎のペットボトルの山だった。どうやら、泥酔のうえでの無断欠勤だったようだ。それでも、無理やり受診させると、肺と心臓に精密検査の必要があることがわかったが、Aさんは医師の制止も聞かずに3日間行方不明に。

 それから、1ケ月、会社は有給休暇扱いで給料を払い、軽微な仕事に配転のうえ、精密検査をすすめたが、ある日Aさんから「退職する」との連絡がはいり音信不通になってしまった。

 心配した、会社の経営者が、Aさんを紹介してくれた区議会議員Bさん(私ではない)に事情を説明。B区議は、さっそくAさんの自宅を訪問してくれた。すると、びっくりすることがわかったのだ。Aさんは、都営住宅の家賃を滞納し、裁判に訴えられ、12月4日までに強制退去手続きをとられるとのこと。

 B区議は、所属する政党の都議を通じて、東京都住宅局にかけあってくれたが、判決がおりているので、もうどうしようもない、との回答だった。

 Aさんの会社によれば、2年前までパートだったAさんは、その真面目さが評価され、正社員となり、厚生年金、健康保険、雇用保険もはいり、少ないけれどボーナスもあったそうだ。それが、なぜ、2万円程度の都営住宅の家賃を滞納したのだろうか。

 B区議のすすめで、Aさんは大田区生活福祉課の窓口を訪問し相談したそうだ。その結果、Aさんは、大田区役所の公用車の送迎つきで、某区にある自立
支援施設に入所が決定した。

 施設のホームページによれば、路上生活者や路上生活者になりうる人に、住居や食事を提供し、就労支援をするのだそうだが、Aさんは「自らすすんで」路上生活者の道を歩んだ「確信犯」だ。

 これから、4ケ月の間、Aさんは税金で3食付の快適な生活が保証される。月数回、ハローワークの紹介で面接を受けていれば「就労意欲あり」と判断され、4ケ月のちには、めでたく生活保護の認定を受け、安心な老後を送ることができるのだろう。

 はたして、Aさんにとって、人として、それでいいのだろうか。自立支援とは、そういうことなのだろうか。以下をご覧いただきたい。

 平成23年度の大田区内生活保護廃止(やめた)件数 1828件
うち主な理由 死亡 559件(30.6%) 失踪 262件(14.3%)
区外転出 110件(6%) 就労 272件(14.9%)

 就労支援や、生活保護受給により生活再建をした件数は、生活保護廃止件数のたった15%以下にしかならず、生活保護人員からすれば2%以下にすぎないのだ。

 あるべき姿は、生活保護により生活再建のとっかかりを見出し、就労し収入を増やして、生活保護から抜け出す、というものだろう。ところが、一度生活保護の恩恵に与ると未来永劫にわたり抜け出せない、という構図が見えてくる。


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12月04日(水)
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