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いぬぶし秀一の激辛活動日誌
by いぬぶし秀一
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■陸上自衛隊生徒12期生13名殉職by内閣委員会
教官、助教は事態の重大さに驚き、直ちに岸にいた者に溺水者の救助の指示するとともに、みずからも池の中に入り救助活動に全力をあげました。訓練実施部隊を主とするこの初動救助活動により、事故発生後五、六分でおぼれかかった八名をはじめ、水没直前にあった生徒二名が救助され、水没直後の一名が発見されました。その後急を聞いてかけつけた副校長をはじめ学校幹部、教官、生徒等が逐次事故現場に到着し、海上自衛隊横須賀地方隊の水中処分隊員の応援も加え、総勢約五百名をもって救助活動を続行し、午後四時二十五分ころまでにさらに濁水者十二名を逐次発見、これらの者について直ちに医官、職員、生徒による人工呼吸、注射等の応急措置を行なった後、病院に後送してさらに手当を加えたのでありますが、そのかいなくついに生徒十三名が殉職いたしたのでございます。
当時、私は福岡県において第一報を事務次官から聞き、急遽帰京し、詳細を知ったのでありますが、事の重大性から自衛隊の最高指揮監督者たる総理大臣に御報告とおわびを申し上げ、同時に報道機関を通じて御遺族と国民の皆さまにおわび申し上げる一方、直ちに庁内に事務次官を長とする訓練事故臨時調査委員会を設置して事故の原因の究明と将来の事故防止対策の検討を命じ、さらに御遺族への善後措置に遺漏のないよう指示いたしたのであります。
事故の原因につきましては、私もみずからしばしば現場におもむき検討いたしたのでありますが、指導に当たった教官が学校の訓練基準にない不適当な訓練を実施したことが根本原因でありますが、なおかつ、訓練指導等に適切を欠いた諸点が認められたのであります。すなわち、当日訓練途中において訓練計画にない渡河訓練を決心し、これを実施したため、当然必要な事前の準備に周到さが欠けておりました。しかも現場における安全管理措置も不徹底であり、着装して泳いだ経験て全くない生徒に半長靴をはいたまま銃を持たせて泳がせるという訓練にもかかわらず救命胴衣、浮き輪、ボート等救命資器材及び救助要員の配置がほとんどなく、また、教官の現場指導も発進の統制、隊形の規正等において不適切かつ不徹底でありました。また学校当局の安全管理に関する認識が不十分であり、当該池についての危険等度の認識が甘かったため、この池における危険防止等の安全措置がとられていなかったのであります。
なお、今回の訓練に類似した訓練が過去にこの池で実施されていたにもかかわらず、上級幹部がその実情を把握しておらず適切な措置がとられていなかったのであります。
私は、常日ごろ人命尊重を旨とし、健康及び衛生に留意しつつ教育訓練に励むよう指示しておりましたが、今回の事故を機に、さらに安全保持の見地から科学的合理的にしてかつ具体的な方策の検討を命じたのであります。すなわち、将来の訓練事故を防止する対策としましては、人命尊重に徹し、計画外で、かつ危険を伴うような訓練は禁止することといたしました。なお、安全管理の徹底を期するため今月から私の特命による安全監察を実施するとともに部隊等にも安全監察を行なわせることにしております。部隊及び学校においては、安全管理に関する指示通達の徹底をはかるとともに、安全管理教育を強化してまいる所存でございます。水上訓練については、危険予防措置の徹底をはかり、救命資器材の総点検及び整備を行ない、駐とん地内の用水池、ため池等での遊泳を禁止し、人口呼吸法を含む水難救助教育を推進していきたいと考えております。
関係責任者の処分につきましては、不本意ながら七月三十日、十四名に対してこれを行なったのでありますが、校長高木陸将補は減給二月五分の一、教官田村一尉は停職四十日、教官高林二尉は停職十日、その他減給三名、戒告一名、訓戒一名、注意六名となっております。
善後措置につきましては、去る七月五日殉職生徒隊員の葬儀を少年工科学校において学校葬としてとり行ないましたが、私もこれに参列し、殉職生徒隊員の霊前にぬかずいて最善を尽くすことを誓い、その後全御遺族を弔問いたしました。殉職生徒隊員の純粋なる行動に対しては勲八等瑞宝章が授与せられ、さらに、二階級特別昇任が行なわれました。
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08月27日(木)
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