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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■続々・「箱舟のノワール」のこと
「箱舟のノワール」(Amamori Lab)の実績を全て達成したので感想を。
沈みゆく大陸から脱出するために建造された巨大蒸気船ノワール号だが、航行中に嵐に出合い、浸水が始まってしまう。主人公は持ち前の幸運を駆使して沈みゆく船から脱出を図るが、この沈没事故にはとある陰謀が隠されていた。
幸運という要素を特徴としたノンフィールドRPG。開始時に3人の主人公から1人を選び、その後スロットの数まで能力を底上げできるPerkを装備して、ノワール号からの脱出を目指す。ノワール号は5層構造で、最上層の脱出艇に到達するのが目的。ただし、船内には乗客と一緒に輸送されていた数々の猛獣が浸水時の衝撃で解き放たれており、主人公の前に敵として立ちはだかる。
操作はマウスをクリックして行動を選択するのみ。ノンフィールドRPGなのでマップは一本道であり、前進する最中に戦闘やアイテム取得、回復、乗客の救出などの事象がランダムで発生する。戦闘は敵の体力を0にするか逃げることで終了する。敵を倒すか乗客を助けることで経験値が1つ(条件によっては2つ)手に入り、4つ溜まるとレベルアップする。レベルアップ時には、体力回復、幸運回復、攻撃上昇、防御上昇とそれぞれ3枚ずつ用意されたカードを1枚引けると共に、ランダムで選ばれたPerkを1つ選択できる。100歩歩くとボス戦となり、勝つと上の層に上ることができる。一方、戦闘時に主人公の体力が0になった時点でゲームオーバーとなる。
この作品の特徴である幸運という要素は、戦闘で逃げる、アイテムを拾う、安全な部屋で回復する、乗客を救助する、レベルアップ時のPerkを変更するなど、重要な選択でほとんどの場合消費をする。幸運は有限で、10歩歩くごとに一定量回復する。回復量は幸運の最大値に比例する。幸運という資源を上手に運用して、主人公に有利な状況を引き寄せるのがこの作品の攻略となる。
ノンフィールドRPGというとシステムに特徴を持たせるような傾向にあるが、この作品では物語の要素を上手く取り入れている。プレイヤーはゲームを始めた時点では沈没する船から脱出するという目的しか知らされていないが、助けた乗客との会話や、一定条件でアンロックされるアーカイブを読むことで、この沈没が単なる事故ではないことを徐々に知ることとなる。アーカイブをアンロックすることでスロットやPerkが増えるので、攻略を有利にするためにはアーカイブをアンロックする必要があり、必然的に攻略と並行して物語を紐解いていくことになる。このようなゲームの進行に合わせた物語の導入はとても自然で上手くできていると思った次第である。
とはいえ、その物語要素を楽しめるかというと、素直に首を縦に振れないのが正直なところ。この作品の敵は主人公の能力よりも高めに設定されており、Perkや能力強化、武器などの助力を得て強化しないと対等には戦えない。しかし、その強化における運の要素があまりにも強すぎてプレイヤーの介入する余地が少なく、プレイ内容は全く安定しない。真相の解明についても、救助した乗客と3回会話すると重要な証言が得られて、その重要な証言の組み合わせにより解明する真相が異なってくるが、会話できるかどうかも運である。なので、運次第では理不尽な終わり方もするが、少なくとも全てのアーカイブをアンロックするまででもそれを散々味わう羽目になったし、実績を全て達成しようとするとその頻度は格段に増した。幸運を特徴としたシステムなので難易度調整にも実際の運の要素を積極的に導入したのだろうけど、結果的にその運を過度に求めるような調整になっているのには釈然としないものを感じられた。
個人的には、運の要素の強さ以上に乱数の偏りがこの作品を台無しにしているように思えた。ただでさえ運に頼らなければならない難易度調整なのに、強敵が連続して出現したり、武器が欲しいのに薬が続いたり、変えても変えても同じPerkしか出てこないような状況に遭遇すると、それだけで失望を通り越して怒りを覚えてしまう。乱数生成の雑さがとにかく酷いの一言に尽きた。
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11月28日(水)
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