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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■「救う」のこと
9時半頃起床。
今日は一日かけて「救う」(いくちおすてご)をクリアしたので、その感想を。
角の生えた少女が竜を「救う」ために戦う2Dアクション。
操作は左右移動と剣での攻撃、盾での防御、魔法での回復。移動は2回入力でダッシュの後高速移動となる。剣は2回まで連続攻撃が可能。防御はあらゆる敵の攻撃を防ぐことができるが、体力は削られる。魔法は押しっぱなしで体力を半分回復する。
ゲームの進行は、基本的に敵の竜との一対一(2周目は竜が2体になる)。敵の竜は画面を半分程も覆うほどの巨大な姿をしており、当然ながら攻撃も強烈で、一発でも当たれば吹き飛ばされてしまう。基本的には敵の攻撃を防御で受けつつ、体力も回復しながら数少ない隙に攻撃を当てていく。敵の体力が無くなると勝利で、自機の体力が無くなるとゲームオーバー。ただし、何度でもその場からコンティニューができる。
ドット絵で描かれた画面を半分ほども覆う巨大な竜が、自機と同じ平面上だけでなく画面の手前や奥にまで俊敏に動き回る姿は実に躍動感に溢れており、それだけで大層驚かされた。このドット絵に費やした労力を想像するに、製作者の並々ならぬ熱意を感じ取ることができる。なお、対峙する竜は火炎竜、樹木竜、溶岩竜、雷雲竜、最後の竜の5体。いずれも名前にちなんだ個性的な容姿をしている。火炎竜と溶岩流はいかつい西洋風の竜で、樹木竜と最後の竜は胴が長い東洋風の龍。雷雲竜はふわふわもこもこした、竜というより巨大な獣といった感じである。どの竜も印象深い容姿で、それもこの作品の大きな特徴である。特に、最後の竜の純白の美しい動きはとても幻想的で、思わず感嘆の声を上げてしまった(そして、2周目にそれが2体登場したときには加えて絶望で鳥肌が立った)。
竜のその巨体に似つかわしくない移動速度は正しく脅威の一言に尽きるし、そこから繰り出されるパンチや突進、火炎、熱線、雷撃といった数々の攻撃は当たったら脆弱な自機など即吹き飛ばされてしまうほどの威力である。そんな竜へとがむしゃらに突っ込んでも竜の強力な攻撃の前に到底太刀打ちできず即ゲームオーバーとなること必至。プレイヤーは終始防戦一方で、敵の攻撃を受けつつ、数少ない攻撃の機会に着実に剣をたたき込むこととなる。ただし、敵の攻撃を防御しているだけでも体力は減っていくので、これまた隙を見て体力を回復させなければならない。竜と戦うには攻撃の機会を伺えるまでひたすら耐える忍耐力と、体力が減っても焦らずに的確な操作を判断できる冷静さが要求され、竜の派手な動きや攻撃とは裏腹にひたすら地味な攻撃を続けることとなる。この辺りは極めて人を選ぶ要因になるかと思われる。さらに、竜の暴力的な攻撃には予兆の無いものもあり、しばしば理不尽なやられ方をすることもある。なので、竜と戦うには前述の能力が必要だが、竜に勝つには幾ばくかの運も必要となるところが、さらに人を選ぶかもしれない。
見た目とは裏腹に地味なゲーム内容であり、時には理不尽なやられ方もすることで調整面での粗削りさも否めない。しかし、脆弱な人が巨大な竜と戦うということは、つまりはこういうことではなかろうか。人の弱き力では到底竜と対峙することなど敵わず、この自機も全ての攻撃を受ける防御と無限に使える回復魔法という超常的な力を持ってして、ようやく竜と戦うことが出来ている。そこから先に必要なのは人としての知恵だがそれだけでは勝つには不十分で、運による加護があって初めて勝利をつかみ取ることができる。そう考えると、この作品の全てが腑に落ちた。そして、竜との戦いを通して、竜というのは普通の人が戦って勝てるほどの弱い存在ではなく、ひたすらに強大な力を持つ畏怖すべき種族であるという、製作者の竜に対する敬意も感じ取ることができた。それは、緻密に描かれた数々の竜の姿にも如実に表れている。
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11月25日(土)
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