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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■「終わる世界とキミとぼく」のこと
プレイしたての頃に理不尽な運ゲーという印象を抱いていたので、このように攻略が進むことがにわかには信じられなかったが、プレイ内容を振り返ってみると、イベントの発生確率とその内容が非常に緻密に調整されていることに気が付いた。さらに、イベント単体のみならず、イベント間の相互作用やアイテムの活用方法、腕力と知力に関する条件設定など、膨大で多岐に渡る調整について考えれば考えるほどその絶妙さを知ることとなり、驚きを禁じえなかった。そして、プレイヤーはこの終末の世界で起こる全ての事象を知りうる存在となり、神の視点をもって少年少女を導くのがこのゲームの狙いということが理解できた。この狙いが理解できた途端、理不尽な運ゲーという印象は霧散し、与えられた条件をいかに有利に活用するかを考える、いわばボードゲームのようなゲームであるという印象に置き換わった。
その後、No.3のバッドエンドまでは普通に到達できるようになったものの、そこから先がまた長かった。とにかくあらゆる試行錯誤を行い、それが恐らく3桁となった末にようやく条件を見つけ出すことができた。そして、到達した真の結末は、今までの努力が報われるほどの鮮烈な演出に迎えられて正しく感無量であった。この結末を迎えた後に公式サイトを見たところ、一人で挑むようにはできていないと書かれていて唖然としたが、それが自力で最後までこのゲームを攻略できたことへの大きな達成感へとつながった。
また、運をプレイヤーが支配できるようにある意味「錯覚」させるような綿密な調整は、その世界観を受け入れる余裕をも生み出した。厳密に終末を迎えることが決定されている核戦争後の世界において、かつての文明の跡の描写や少年少女の懸命の行動を傍観することがある種の愉悦へと繋がり、すっかり魅入られてしまった。全実績を達成した後に読むことができる「崩壊前夜」は、正しくそんな世界観に魅入られた人に向けて用意されたもので、この世界の設定を圧倒的な情報量で補完してくれる素晴らしい内容であった。そして、世界観に魅入られることを見透かしたかのように用意されてたことにも、調整の綿密さを感じざるを得なかった。
結局は運が支配する世界ではあるものの、同じく綿密に調整をされたイベントが絡み合い計算された世界はプレイヤーに次々と選択を提示してくる。そして、その選択を間違えない限り、少年少女の生存確率は確実に上昇する。逆に言うと、選択を間違えた途端に少年少女は窮地に陥り、そのまま死へと向かっても何ら不思議ではない。この残酷な世界を知り尽くした上で一手一手の判断を迫られる緊迫感と、その選択が事態を好転させるように働いたときの達成感、高揚感は際立って高く、攻略を通じて調整の妙をも存分に楽しませてもらえた傑作であった。ただし、ゲームの展開が運に支配されることは純然たる事実なので、理不尽な運ゲーであるという印象を抱く人はいるし、それはそれで間違ってはいない。評価を見ても肯定派と否定派で完全に二分されており、人を選ぶ作品であることは間違いないであろう。
あと、1プレイの時間が短く繰り返しのプレイも容易であることから、凶悪な時間泥棒でもあった。主に成分献血の最中にプレイすることが多かったが、小一時間かかる献血のはずなのに毎回のようにあっという間に終わったように感じられた。
09月12日(土)
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