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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■「NonetEnsemble」のこと
 今作は特にエンゲージによる効果の活用が攻略上重要な意味合いを持っており、新たな魔石を合成してはエンゲージしてその効果を確認するという流れが非常に楽しかった。序盤の迷宮では出現する魔石も4種類と少なく組み合わせも10通りだけなので全ての効果を確認するのは楽だったが、先に進むにつれて登場する魔石の種類も増え、後半になると9種類全ての魔石が登場してその組み合わせも45通り(実際には合成不可の組み合わせもあるのでこれよりは少ない)となり、しっかりとした記録をつけないと到底把握は無理。攻略が進むにつれて記録すべき内容も増えていって作業は大変だったが、全ての組み合わせの詳細な記録が完成ときは今までのシリーズ以上に大きな達成感を得ることができた。
 中盤までの登場する魔石が限られる迷宮では、その迷宮に登場する魔石の組み合わせでは全ての状態異常に対処できないというのが面白い調整と感じた次第。確かに、中盤程度で全ての状態異常に対処できてしまったら探索の緊縛感も薄れてしまうし、何より後半でその状態異常に対処できる魔石を持ち込んで圧倒するという楽しみも奪われてしまうので、この調整はゲームを盛り上げるのに上手に働いていた。
 あと、迷宮内には魔法によって効果を発揮する様々な仕掛けがあるのも、魔石の活用幅を広げてくれた。焚火に火を付けると明るくなったり、落ち葉を風で飛ばすと木の実が入手できたりと、自然現象と魔石の効果を上手に結び付けている。しかし、仕掛けに応じた魔石が常に入手できるわけでもなく、また仕掛けに使うか合成に使うかという葛藤もあり、特に装備が貧弱な序盤において様々な迷いを生み出す仕掛けには結構翻弄された感があった。さらに、これら仕掛けに関する説明が一切無いのはずいぶんと思い切った仕様である。プレイヤーはその仕掛けを見て発動させるための魔法を探り当てなければならず、一種の謎解き要素として作用していたのも面白かった。クリアした今でも、もしかしたらまだ解明していない仕掛けがあるかもしれない。

 迷宮の難易度は、段階的にシステムや攻略を学ぶことができる良い調整であった。やはり、ローグライクは実経験を即興で活かすのが大きな醍醐味の一つであり、この作品は前の迷宮で得た知見を次の迷宮の攻略時にきちんと活かせて、その醍醐味をしっかりと味わうことができたといえる。最後の迷宮は今までの迷宮の集大成のような構成であり、様々な敵や状態異常に対処する能力を求められて正にこの作品の卒業試験を受けている感覚であった。
 ボスについては、雑魚を生み出すボスは攻略し甲斐があったが、単体のボスは正面から殴っていたら初見で勝てたものばかりで、ボスによって割と評価が分かれる内容であった。一番攻略を楽しめたのは不帰の霊峰の分身するボスで、このボスで全体魔法の強力さを認識することができて、それ以降の迷宮の攻略に大変役に立った。逆に、一方的に攻撃して倒せたボスは果たしてどのような攻略を要求していたのか、今でも何ともすっきりしない感覚に囚われている。
 ボスを倒すと探索に役立つ設備が拠点に増えるという要素は、アイテム保管以外はあれば便利程度の内容でそれほど存在感があるわけではなかった。それでも、状態異常無効をランダムに付与する温泉と、やられたときに所持品をランダムで回収する回収屋には結構助けられた。ボスを倒すと入手できるイベントアイテムで設備の強化も可能となっているが、好感度以上に手間がかかるので、こちらは適当に切り上げた。

 物語は今まで続いてきたNonetシリーズの結末のような印象を受けた。が、ラスボスの正体が謎だったり、俺たちの冒険はこれからみたいなエンディングに不完全燃焼気味だったりと、今一つ腑に落ちないところも少なからずあったりする。とはいえ、これは次回作への布石という解釈もできるのではなかろうかと。
 迷宮内に落ちているアーティファクトを持ち帰ると、昔の文献が参照できるようになる。この内容はNonetシリーズの過去作の内容を述べたものもあり、いろいろと考察が捗りそうな要素を興味深く読ませてもらえた。ただ、残念なことに過去作の内容をおぼろげにしか覚えておらず、過去作と結びつけられなかったものも多かったが。


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06月14日(日)
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