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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■「Dead or School」のこと
各駅の最後にはボスが待ち構えているのだが、これも単なる1対1で終わらせない趣向を凝らしたボス揃いであった。容姿も主人公と同じくらいから画面の半分以上を埋め尽くす巨大なものまで、戦闘も正面から対峙するものから仕掛けを活用して戦うものまで多種多様であり、もちろん攻撃手段もボスによりまるで異なる。初見時で倒せたボスはおらず試行錯誤は必至。しかし、何度もやられながら攻略の糸口を掴んでいく過程は道中の攻略以上に大きな手応えを得ることができ、ボスを倒したときの満足度も一際高いものがあった。個性的なボス揃いであるが、中でも個人的には秋葉原のボスが非常に気に入っている。超巨大なボスを見上げるような視点から始まってボスの攻撃をかいくぐって接近し、信号機や看板にぶら下がって飛び移りながらボスの頭上に飛び乗り弱点に攻撃を叩き込むという一連の流れに、視覚的に映える熱い戦闘を表現したいという製作者の強い想いを感じ取ることができた。あと、機械人形の腕が変形して様々な兵器になるというのも、きっとやりたかったことなのだろうと。ただ、一方で武術館のボスは手間が必要以上にかかって退屈だったボスがいたのも事実。こちらは仕掛けにとらわれ過ぎた感があった。
世界観は、地上が腐敗生物に制圧されて地下で生活しなければならないという設定と実在の地名を融合させることで、関東に住む私にはより親近感のある創作として受け止めることができた。また、地下の移動に地下鉄を活用していることや、地下で生活するために地下を掘り進むための職業が発生していること、無秩序に掘られた生活域がまるで地下迷宮のようになっていることといった設定も、この作品の独自性を高めている魅力的な要素。特に、生活域が地下迷宮のようになっているという点は、マップの形状に必然性を持たせており説得力も高かった。
物語は力業で解決しているところもいくつか見受けられて不自然に感じられたところも正直あったが(特に工学的な面で)、絶望に満ちた世界でただ1人希望を叶えるために奮闘する主人公の姿に感化されて思想を超えた仲間が増えていくという王道的な展開はやはり良いものがあった。終盤は熱い展開が続き、ゲームをプレイする手が止まらず遂にはクリアまで到達してしまったほどであった。とにかく要所要所で熱い展開、熱い場面が挿入されており、製作者の強い創作意欲をそれらの表現に感じ取ることができた。いろいろ突っ込みどころも多いが、それをねじ伏せる勢いのある熱い物語であった。
一方で、音楽はフリー素材が多く使われており、新鮮味には乏しかった。とはいえ、これは3人で製作していることを考慮すると止むを得ないことである。が、この完成度で独自に楽曲が備わっていないことは非常に惜しいと思わざるを得ない。
全実績を達成して、ボスの再戦も全てクリア。武器以外の収集要素も多く、本筋以外でも楽しませてもらうことができた。収集要素である人間が地上で生活していた頃の遺物の解説を、今の生活と照らし合わせて読むのが愉快であった。
難易度は決して低くなく、特に序盤で戦力を揃えるまではかなり苦労したが、そこを乗り越えれば攻略の手応えに満ちた内容と独自の世界観による物語を堪能することができた。難易度や世界観などに製作者のこだわりが如実に現れており、しかもそれが作品としてしっかりと完成されている、正に力作と呼べる作品であった。
05月06日(水)
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