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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■「ジラフとアンニカ」のこと
 あと、幕間のデモが漫画形式で表現されるのもこのゲームの大きな特徴。コマ割りされた流れを追うのは漫画そのものだが、キャラに動きがあったり擬音が追加されたりとコンピュータゲームならではの演出も加わり、とても新鮮な演出であった。一方で3Dキャラによるデモもあり、こちらはこちらでしっかりと作り込まれて高品位な内容である。2Dと3Dの使い分けも的確で、ゲームの流れに上手に抑揚を付けているという印象を受けた。

 ゲームの方は、3DADVの場面は最後のダンジョンを除いてはそれほど厳密な操作を要求されることもなく、一方で時間の要素が随所に盛り込まれて適度な刺激となり、移動や謎解きをアンニカの気持ちいいアクションと共に快適に楽しめた。ただし、最後のダンジョンはそれまでのミスの回数をここだけで超えるほどの難易度であり、かなり手ごわい思いをさせられた。あと、道中には収集要素のねこ絵を集める楽しさもあるが、これがまた隠し場所が絶妙。変に入り組んだ場所には無いものの、ちょっとした観察力や注意深さを要求するところは多分にあり、非常に探し甲斐のある配置には何度も感心させられた。
 一方、ボスのリズムゲームは本気の内容。クリアするだけなら難易度を下げればいいが、実績やおまけ絵の解除に必要な高得点を取るとなると厳しめの評価が立ちはだかる。最上位のSランクを取るには、単にミスをしないだけでなくほぼGREAT判定を取らなければならず、そのせいでボスキャラのリリィの踊りを楽しむ余裕などまるで無し。この辺りに、製作者の音ゲーに対する姿勢が現れている気がした。

 物語の構成も素晴らしかった。中盤までは牧歌的な雰囲気の中、ジラフの依頼どおりにダンジョンを次々と攻略するアンニカの大冒険が主体となるが、そこから物語は急展開してこの世界の謎に迫ることになり、一気に緊迫感が増した。ただ、あまり明かしてしまうとゲームの魅力を損なうので、ここでは多くは語らないことにする。
 エンディングではゲーム中に登場した背景やキャラクター、果ては小物まで数多くの要素を回収してくれて、非常にすっきりする終わり方が非常に好印象。とても丁寧に構築された作品であることを再認識させられた。エンディングを迎えた後にねこ絵を全て集めた景品を受け取ったときは、感動で涙が出そうになった程である。

 不満点は、行動に制約を及ぼす要素が気になったことかと。泳ぐ時間については進行の都合上仕方ないにしても、ダッシュは移動の快適さが格段に向上する故にゲージ制にする必要はあったのか疑問であった。元気いっぱいのアンニカだから、星のかけらの力を得れば疲れ知らずで走り抜けてもいいのではと。もしくは、ゲージの回復速度を大幅に上昇させて欲しかった感がある。
 あと、収集要素に過ぎないねこ絵集めをゲームの進行に必要不可欠なものにしてしまったのもどうかと思った次第。必要なものにするとしても、枚数が多すぎるように感じた。

 初期の体験版をプレイしたころは、何故この作品の製作にこれほどまで時間が掛かるのか正直疑問に思っていたが、完成版をプレイして納得。童話のような世界観を丁寧に、そして完璧に描くため、細部に至るまできめ細やかな配慮が行き届いた作品であり、そのおかげでスピカ島の冒険を心行くまで楽しむことができた。今となっては逆にこの期間でよくぞここまでの非の打ち所の無い完成度に作り上げたことに驚愕する次第である。
 ゲームからはアンニカからの溢れんばかりの元気を、物語からは消すことのできない悲しい過去を癒してくれる未来への希望を与えてもらった。心温まる素敵な物語をありがとうございました。
 さて、エンディングを迎えてこれから実績埋め。といっても、残るのはほとんどがリズムアクションの評価に関するもの。音ゲーを引退して久しいが、昔の情熱を呼び起こして老体に鞭打って頑張ってみようかと。

03月30日(月)
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