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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■「逃亡性痛み症候群」のこと
そして、仲間を見つける目的がはっきりしないまま、感情を持たないことに惨めさを感じたゴーレムに感情を与えようという新たな目的に沿って旅が進むのだが、最終面に入ったところで数々の伏線が回収されてこの旅の目的と理由、動機など全ての真実が一気に明らかになる展開には大きな解放感を覚えて胸が空く思いであった。さらに、そこから先にも衝撃を受けた展開が待っていた。この作品のヒロイン役でもあるゴーレムなのだが、感情が無い割には喜怒哀楽は普通の人間並みにはっきりしている。それは組み込まれた回路の演算結果ということなのだが、それでも普通の人間並みの反応を見せてくれる。ここまで精巧なのに感情を得る必要があるのかと疑念を抱いていた終盤に「私たちは絶対に負けない!だって、こんなに死ぬのが怖いんだもの!」(ネタバレ反転)という一言で、感情を得ることの意味を理解して心を打たれた。この一言で、この作品に対する印象が一気に強いものになった。
グラフィックは癖があるが、こういう騒動劇にはちょっと粗削りでも似合うような気がして、作品の雰囲気にはよく合っているかと。音楽はタイトル曲を除いてフリー素材なのだが、どれも場面に適した選曲で、特にエンディングはこの作品のために作曲されたのではと思うほど違和感が無く素晴らしかった。タイトル曲も、個性的なキャラクターが織りなす不穏な騒動をよく表しているかと。
システム、物語共に個性的な作風を大いに楽しませてもらえた。主人公たちの今後の、決して平穏ではないだろうがそれ以上の喜びに満ちた生活を願ってやまない。
ところで、アイテム屋のシャルル商店という名前といい、店員のモルという名前といい、店員の前掛けに描かれた水中置換の絵といい、作者の方は化学好き?
09月24日(月)
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