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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■続・「ホタルノニッキ」のこと
その高まる不穏さに拍車を掛けたのが、道中で拾うことができるキオクノカケラというアイテム。このアイテムを取ると、ミオンのものと思われる過去の記憶が再現される。こちらも最初の頃はミオンの幸せな家庭が再現されて、もしかしたら外に出るとこの幸せがもう一度訪れるのではないかと淡い期待も抱かせたものである。しかし、突如襲った悲劇とその後の狂気が壮絶で、その期待は脆くも崩れ去った。ミオンは死亡したオリジナルのミオンを復活させるために両親が作ったクローンだったという衝撃の事実や、その過程で様々なおぞましい実験が行われていたという場面が二頭身のキャラクターで描かれることにはただただ狂気しか感じられず、後半これ以上の衝撃は無いだろうと思いながら次のキオクノカケラを取ったら更なる衝撃的な内容で打ちのめされたりと、下手なホラーゲームよりもずっと恐ろしかった。あと、4ボスとの戦闘も、それまで鬱屈としていた雰囲気から一転した能天気な音楽に乗って繰り広げられる大道芸のような内容に狂気しか感じられなかった。
そして、止めを刺したのが考察。真のエンディングを見ても不明瞭な点が多々あったので考察サイトを見たのだが、もう救いはまるで無かった。誰も悪くは無いのに、誰も幸せにはならなかった物語で、オリジナルとクローン両方のミオンの残酷な境遇には同情の念を禁じ得なかった。最後に両者が相容れたことだけが唯一の救いと思われる出来事であった。
それにしても、考察の中でチャプター3から4に移る際に画面が乱れて仮想現実へ移行するという点については疑問を抱く。そもそも、オリジナルミオンの精神体という存在形態や、敵の蠢く影といった存在が非現実的で、プレイ中ずっと違和感を覚えていた。もしかしたら、この世界は最初から仮想現実で、本来は現実世界を再現していたものが、何らかの原因で異常をきたして世界は廃墟になり住人は蠢く影になってしまったのかもしれない。そして、その原因というのが、キオクノカケラの1つにあった、オリジナルミオンがクローンミオンと出会ったときに世界が乱れたことではないかと。考察としては全然不十分ではあるが、そう考えると自分の中では腑に落ちる。
この作品はゲームだけでは全てが語られておらず、朗読ムービーやビジュアルブックといった他の媒体にも重要な情報が記されている。ゲームだけで完結しないことの良し悪しは別として、考察が好きな人にとっては随分と考察のし甲斐のある物語だったのではないかと。
ゲーム自体は、ホタルの誘導に対するミオンの動きを理解したという前提で、間接的に操作するというシステムを考慮して調整された様々な仕掛けによるパズルやアクションが、一般的なアクションゲームとはまた違った面白さを味わえて新鮮であった。実績も、ごく一部(2-3と4ボス)を除いて挑戦し甲斐のあるもので、このシステムをさらに楽しめたことに高い満足度が得られた。ただ、あまりにも救いの無い物語はかなり心に刺さるものがあった。
ところで、可愛い少女が酷い目に遭うのは、どうやら日本一ソフトウェアの伝統らしい。「ロゼと黄昏の古城」もかなり陰惨な内容のようなので、覚悟してプレイすることにしよう。
07月18日(水)
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