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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■「Magic Potion Destroyer」のこと
加えて、調薬コストを消費して初期能力の強化を行う薬であるが、こちらの強化も加算ではなく乗算で増えていくので、同じ能力を強化する薬を複数飲むことで、さらに能力のインフレ度合いが増していく。こちらは面が進むごとにそのインフレ度合いを堪能できるようになっており、高次面での高レベルではインフレがインフレを呼んで、序盤からは想像もつかないような桁の数字が飛び交うのが実に楽しい。また、薬は面が進むにつれて解禁されるものと、HPやMP、攻撃力が一定数に達したときに解禁される2種類があり、前者は各能力の初期値の上昇と直接的なもの、後者は入手できるMPの割合を増やしたり、被ダメージの割合を減らしたり、最大HPのレベルを上げた時に体力を回復したりと補佐的なものである。後者の薬をいつ解禁できるかは前者の薬と密接な関係があるので、この面ではここまで能力の初期値が上がるからこの薬を解禁するためにこの能力をここまで上げるといった計画的な能力強化も要求されるところに、インフレとはまた違った能力強化の面白さが見いだされた。
ただ、調整面ではやや不満点も感じた次第である。一番の不満点は、ゲーム中盤で通常敵からの被ダメージ率が-100%、すなわち0にできてしまうことである。これは、HPの最大値を上げることで解禁される被ダメージ率減少の薬の効果によるものだが、私の攻略では14面で全て解禁できてしまった。こうなると、通常敵との戦闘は消化試合となり、あとはボス級の戦闘だけを考えればいいのだが、そのボス級の戦闘もラスボスさえ普通に調薬コストを稼いでいれば全然楽勝なので手応えはまるで無し。前作では最後の最後までぎりぎりの戦いとなり緊張感が楽しめたのだが、今作はそれが中盤で無くなってしまったのが非常に残念であった。
また、難易度の設定にも疑問が残る。全部で8つの難易度があり、NORMALより上の難易度では敵の強さは変わらないものの体力回復や経過時間など様々な制約が加わり、その制約下で攻略を進めなければならない。確かに、序盤の面ではこの制約に大きく影響されてその制約に応じた攻略を考えなければならないのだが、最初の2〜3面さえクリアできればその制約の影響が小さくなってあとはNORMALと同じ攻略が通用するという難易度がほとんどであった。唯一、難易度HELLだけは大幅な攻略変更を余儀なくされたが、それ以外はほとんど同じプレイ内容となり新鮮味は薄かった。なので、ここまで難易度を細分化する意義について大きく疑問を抱いた次第である。実績も、NORMAL以降の難易度の達成率が著しく低下していることも、この疑問に対するプレイヤー反応を客観的に表しているように思える。
一方で、物語面では前作に比べて大きな進歩を遂げている。最初に提示された物語は、魔女に囚われた少女クローディアが弟に会うため囚われてから3年後に魔女の館から脱出するという簡素なものだが、ゲームを進めるにつれてその裏に込められた物語が明らかになっていく。その物語を明らかにする手法というのが薬の解禁で、解禁された薬には物語の断片が語られるという仕組みになっている。そして、全ての薬が解禁されたとき、弟に会う目的や3年という時間の意味、さらにはこの世界観における魔女という存在やクローディアの取った悲劇的な選択肢など、物語の全容と様々な事実が明らかになる。この仕組みが薬を解禁する意味合いを攻略だけに留めないことには大きく感心させられた。
さらに、各面の背景や出現する敵もこの世界観を大きく広げる役目を果たしている。ある面では研究施設のような建物が舞台で、またある面では大量の人が結晶内に閉じ込められており、それらは物語やエンディングの内容と密接な関わりを持っている。出現する敵も、容姿は人外だが名前に人としての容姿の特徴や人名が付けられた物も居り、以前は人であったことは想像に難くない。そして、これらの断片的な情報を総合していくと、魔女がこの館で行っていたおぞましい実験の内容やその実験の目的が明らかになっていく。一通り薬を解禁してエンディングも全て見た後では世界観に対する理解が深まり、再度プレイした時に背景や敵に対して初回のプレイ時とは全く違う薄昏い印象を受けて衝撃的であった。
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02月11日(日)
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