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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■続々・「AGARTHA」のこと
 攻略に用いた冒険者は、大体は攻撃手段に富んだ魔法使いか移動能力の高いエスパーで事足りた。特に、魔法使いはボス戦で威力を発揮し、最初のボス(この時点では魔法使いはいない)とラスボス以外は全員魔法使いで倒すことができたくらい使い勝手の良いキャラであった。そして、この2人でどうしようもないときに他のキャラの使用を検討するという感じで進めていった。この2人以外のキャラは所持する武器の癖が強く汎用性に乏しいが、逆に特定の面では大きな活躍を見せてくれる。風水師など活躍できる場面は数えるほどであったが、とある面の隠し出口への到達に必須だったり、それぞれのキャラを活躍できるようにしっかりと作られている面構成にキャラ選択の意義を感じられた次第である。ただ、ロボットと農夫は取得条件が厳しいくて、全面クリア後に取得できたから、実質6人の冒険者で攻略できたことになる。そういえば、冒険者の面々がどれも個性的だったのも、神電研らしいと感じたところである。
 ただ、通常面の手応えが十分だったのに対して、ボス戦は最初のボスとラスボスを除いて接近して攻撃を当て続けるだけで倒せたというのが、やや拍子抜けという感じがした。ボス戦が展開の抑揚になっていないというのが率直なところである。それにしても、無限増殖するラスボスはアルケミスト以外で倒す方法がまるで思い浮かばないのだが。
 画面の描画は昔のゲームのドット絵を意識した感じで、音楽もチップチューンと、古風な雰囲気の演出については、まずはセルオートマトンによる自然現象の表現ありきかという印象。セルオートマトンの描写が荒いドット絵と相性が良く、その古風な見た目から音楽もチップチューンにしたのではないかと推測される。でも、楽曲はどれも冒険心を高揚させるように作曲されており、チップチューンの音色も併せてゲームに良く合っていた。

 セルオートマトンによる自然現象の再現という技術的な側面と、立ちはだかる自然を相手に道なき道を突き進むというゲーム的な側面が上手く合致した、非常に独創性が高く独自の面白さを持った作品であった。この辺りの職人芸的な仕上がりに、さすが長年同人ゲームを作っている神奈川電子技術研究所であると思った次第である。
 そして、私の中ではこの作品は同人ゲームであるという思いを特に強く抱いた。拍子抜けしたボス戦のような隙のある作りに、洗練されたインディーゲームではなく、どこかあか抜けないところが逆に魅力である「同人ゲーム」なのである。

11月18日(土)
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