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雪さんすきすき日記
by 氷室 万寿
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■「ゆりかごのそら」のこと
そして、操作の大半を占める攻撃に程よい変化を与えてくれるのが、クーニャが扱う武器の数々。使える武器は剣や槍など純粋な武器から、しゃもじやかん、フライパンなどの日用品、敵の部位まで種々雑多。日用品などはさすがに純粋な武器よりは能力は劣るものの、その真面目な解説と絵的な面白さで使いたくなる魅力が大きく、入手したらとりあえず一度は装備して楽しめる要素になっている。中でも、身長ほどあるバールと、大きさでいったら最大のダンボールを振り回す姿が強く印象に残っている。また、これらの武器の中にはお使いイベントを達成することで入手できるものも数多く、その期待感から単調な作業にも苦なく応じられた(なので、報酬が換金アイテムだったりすると落胆したが)。
演出面では、呆れるほど描き込まれたドット絵の動きにひたすら感服。クーニャ1人とっても全てのスキルで実に細かい動きを見せてくれて、それがコンボシステムの魅力の大きな一端を担っている。さらに、仲間であるナツメやトト、その他の主要キャラも特にイベント時には目を見張るほどの動きを見せて、物語の展開に強く引き込ませてくれた。
また、クーニャには台詞が無く、手を上げる、うなずく、首を振るといった意思表示しかしない。実際には会話が行われているものの、それはプレイヤーの想像に委ねられており、そのおかげでクーニャへの感情移入が著しく進んだ感がある。後半のボス戦では、その過酷な運命からクーニャに戦わせたくないと本気で思ったほどで、これほど感情移入が進んでいたことに自分でも驚いた。
あと、最初の村でブランコがかかった木の隣の家に入ったら小さな子供達が出迎えてくれて、生活水準の描写の上手さに感心させられたが、その後もそういう細かい描写がいくつも見受けられて、最後まで徹底されていたのはとても好印象であった。
音楽についても思うところが。曲調はどちらかというと落ち着いた雰囲気のものが多く、そこにある種の優しさのようなものすら感じられた。それが、この世界への理解が進むにつれて、その優しさが黄昏的な物悲しさに変わっていったのがとても印象的であった。
主人公が獣人であることや「そら」を探すということから、その世界観はある程度予測は付くものの、やはり実際に目にすると衝撃を受ける展開が多かった。最初の牧歌的な雰囲気とはまるでかけ離れたこの過酷な世界で、それでもクーニャが母親と「そら」を探すことを最後まで頑張れたのは、大切な仲間の存在があってのこと。特に、ナツメについては、最初は単に猪突猛進で元気な女の子としか見てなかったのだが、終盤でクーニャのために涙を流す姿に強く心を打たれ、クーニャにとって大きな支えになっていたことを思い知った。そして、遅まきながら、この作品の主題が仲間との絆の強さであることを理解したのであった。
ゲームの完成度は文句なしに高いのだが、一つだけ残念な点を挙げると、キーコンフィグが無かったこと。これだけ優れたアクションを楽しむのに、最適な環境を設定できないというのはあまりにも酷である。
「そら」というのは、クーニャ達の未来の象徴でもあった。その未来を長く厳しい旅の末に手に入れた彼女達の姿が流れるエンディングを見ながら、私は心の中で祝福の言葉を送っていた。
おめでとう。そして、素敵な物語をありがとう。
あと、この作品をプレイしていて「ときのあくま」のことを思い返すことがしばしば。両作品には母と子という接点があり、どうやらこの題材に私は弱いらしい。
04月03日(日)
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