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窓のそと(Diary by 久野那美)
by 久野那美
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■ 【クチミミ稽古日記・2日目】間でバランスをとってはいけない
最初からかなり意識してくれたためか、今度はかなりうまくいきました。
時間もかなり短縮できました。

同時に。もうひとつ、大きな変化に気づきました。

間を空けることでバランスをとっていた言葉は、その間を詰めるとバランスを崩して倒れそうになります。倒れてしまっては読めないので、読むときに無意識に、新しい方法でバランスをとろうとするのです。その結果、言葉に強弱や緩急や音の変化が現れてきました。間をとる可能性が高いのはだいたい助詞の前後ですから、助詞の読み方が断然変化します。なんというか、無彩色だった「てにおは」に、色がつく感じ。そして、それに引っ張られるように、助詞の前後の言葉のアクセントや強弱や音の長さが微妙に変化して、さっきまではなかった「ニュアンス」が加わっていたのです。

これは感動的な発見でした。早速役者さんに伝えました。
片桐さんは、
「へ〜え。」と云いました。

読んでもらう度に、最初のバージョンとのニュアンスの差はますます大きくなっていきました。そして長さも短くなっていきました。
<間をあけることでバランスをとると、バランスをとるために必要な音のニュアンスが吹き飛んでしまうのだ>ということを確信しました。


その後、プロローグをおおまかに仕上げ、今度は最初から最後まで通して読んでもらいました。

が。

…………長い。

短くした台詞をさらに、短く刈り込んでいきました。
カットしてしまえば最初からなかったかのように見える台詞ばかりで、自分の文章の冗長さが情けなくなりました。

そしてもう一度。

本を縦書きにしたことが功を奏したのか、先日よりもぐっと立体的で開放的な朗読になっていました。
「縦書き。いいですね。読みやすいし。」と、片桐さんも満足していました。
そして、たぶん、家で特訓してきてくれたのだと思いますが、問題だった学者の台詞が、ずいぶん脱コスプレして聞きやすくなっていました。

その後、今一度、音楽を入れることについて話し合いをしました。
入れるならここかな?というところをいくつか挙げて、前後を読んでもらいながら検討しました。何度も、ためしてみました。

最終的に、「この物語には音楽を入れるタイミングがない。」という結論になりました。理由はいろいろあるのですが、要するに入れるより入れない方が聞きやすい、ということです。ただ一カ所だけ。入れるとしたらここだね、という箇所があったのですが、入れる音に条件がありました。そういう音楽が見つかったら検討する。見つからなかったら断念する、ということで落ち着きました。

そんな感じで、2日目の稽古も無事終了しました。(実際はもっといろいろダメ出しをしていますよ)

稽古場日記というのは、すごくむずかしいです。
ほぼ実況で書くことになりますから、結論から逆算して情報を取捨選択することができないのです。そういうわけで、このように、たいへん混沌として読みにくい文章になってしまいます。しかも、混乱してる間に混乱してることを書くので、文章が恐ろしく冗長で切れが悪いのです。
でも、ドキュメンタリーを結末から逆算して創る、というのもおかしな話なので、多少無様ではありますが、できるだけもれなく記録していくことにしました。先日の日記を読んで、「はじめて演劇をした高校生のようだ」という評を下さった方がおられましたが、まあ、そういうのがあってもいいじゃないかと
続けることにしました。今回、3本立てということもあり、1作品あたりの稽古の回数が少ないので、連載というよりは読み切りのような日記になると思います。

よろしければ最後までおつきあい下さい。
そして、公演をぜひ、見にいらして下さいませ。

ふう。やっと書き終わった。

★クチミミ公式公演案内とご予約受付は:→こちらhttp://kmm.kiwamari.org/

07月22日(月)
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